【パン】Le Ressort(ル・ルソール)

(東京都/目黒区)

パンの味を左右する一番の要素は、主要素材である小麦粉の質や発酵種へのこだわりなど多岐にわたります。東京・駒場に開業して10年になる「Le Ressort(ル・ルソール)」では、自家製の発酵種にこだわり、厳選した小麦粉を使用しパン作りをしています。そのうえで、すべての製造行程をていねいにこなすことで、小麦本来の香りや甘味、うま味を引き出すパンづくりを続けています。

クローズアップメニュー
バゲット 300円(税込)
強い甘味を最大の特徴とする北海道小麦と、香りと甘味のバランスの良い湘南小麦をブレンドして使用。ともに石臼挽きで外皮部分も含むため、香りが際立つ。歯切れの良いパンが仕上がるのも石臼挽きの小麦粉の特徴だ。発酵種は、乳酸発酵させた小麦種と、レーズン種の2種類の自家製天然酵母で、作るパンの粉や具材によって単体で使用したり、併用したりと使い分けをしている。今回ご紹介するバゲットは小麦種を単体で使用している。濃厚な味つけの料理やクリームと合わせても負けないしっかりした味と弾力が持ち味で、天然酵母由来の酸味や、醤油を思わせるような香ばしさも魅力。バゲット単体としての販売のほか、サンドイッチや総菜パンの土台としても活用されている。
技のポイント1
プースラント製法で香りと甘味、うま味を十分に引き出す
製法としては、成形後に低温で長時間冷蔵するプースラント製法を採用している。成形後10℃前後の温度でゆっくり膨らませることにより、前日に成形し、10℃前後で一晩寝かせてから焼くため、発酵時間は一般的なバゲットの3〜4倍。長時間の熟成により、小麦粉の香りと甘味やうま味がより一層引き立つ。また、この製法を取り入れることにより、早朝ゼロからの仕込みが不要となり、作業効率の向上や販売機会損失の防止やロスの削減も可能となるメリットも。
技のポイント2
総菜主体のタルティーヌに活用
「Le Ressort」のバゲットは、基本的に料理などに合わせることを想定して焼かれている。写真は、スライスしたバゲットに自家製ホワイトソース、季節の野菜や肉類などをたっぷり乗せて焼き上げたタルティーヌ。手前はラタトゥイユ、チョリソー、モツァレラチーズが、奥はアボカド、タマネギ、ツナ、マヨネーズが、うま味を引き出すパルミジャーノレッジャーノとともに乗っている(ともに420円)。味にメリハリを持たせるため、具材は混ぜずに重ねている。パンの比率が低く総菜をメインとする構成も特徴。

技のポイント3

プチバゲットのシリーズは手軽に食べられ製造効率も高い
バゲットの生地を長さ12cmほどの子どもでも食べやすいサイズに焼き上げたプチバゲットに、総菜やクリーム、チョコレートなどを挟んだシリーズは「子どものうちから上質なパンに親しんでほしい」という店主の思いから生まれた。パンさえ焼いておけば品薄になったものから順次つくれるという意味で製造効率的にも優れている。写真手前は北海道産低水分バターと丸い形がかわいらしいベルギー産カカオ55%のチョコレートを挟んだ「ショコラ55(ゴーゴー)」(190円)。中央右は取引先のフレンチレストラン「アニス」のパテ ド カンパーニュを使った「パテ ド カンパーニュのサンドイッチ」(400円)、中央左は北海道産練乳と低水分バターでつくったクリームを詰めた「ミルクフランス」(140円)、奥は同シリーズではないもののプチサイズの仲間として同じショーケースに並ぶ「ピスタチオクリーム」(200円)で、牛乳や生クリームを使いクルミを練り込んだミルクパンに粒入りのピスタチオクリームをたっぷり挟んだ個性的な一品だ。
オススメメニュー1
フォカッチャ 450円(税込)
フォカッチャは、北海道産小麦とラード、砂糖、塩などを用いた生地をレーズン種とイーストで一晩発酵させてから焼いており、モチモチした食感が特徴。大きなフォカッチャに、こぼれそうなほどたっぷりの具を乗せたこの商品は、「田舎のパン屋さんがつくりそうなフォカッチャ」のイメージ。手前は「オリーブ・トマト・グリエールチーズのフォカッチャ」で、サワークリームを塗った上に大きなオリーブとセミドライトマトが贅沢に並ぶ。奥は「チーズとはちみつのフォカッチャ」で、同じくサワークリーム、ブルーチーズ、モツァレラチーズ、パルミジャーノレッジャーノ、はちみつを重ねて焼き上げた濃厚な一品。タルティーヌとは反対にパン生地の比率が高い。
オススメメニュー2
クロワッサン 220円(税込)/パン オ ショコラ 240円(税込)
クロワッサンには、北海道産小麦と低水分発酵バターを使用。外はサクサク、中はしっとりフワフワの食感が特徴の人気商品。写真奥は同じクロワッサンの生地で、フランスのチョコレートブランド、ヴァローナのチョコレートをくるんだパン オ ショコラ。
  • お店紹介
    「良い商品を良いお客さまに買っていただく。そんなお店であり続けたい」と語るオーナーの清水宣光さん
     「Le Ressort」の店主、清水宣光さんは、料理専門学校の製パンコースを修了後、洋菓子店のパン部門を経て、いまでは日本全国に店舗を展開する「メゾンカイザー・ジャパン」の立ち上げに参画。その後、パリの「メゾンカイザー本店」で修行をし、帰国後は不動産会社で店舗開発に携わったという経歴を持つ。驚くのは、ここまでの経歴が20代前半に凝縮されていることだ。
     こうした豊富な経験をベースに、京王井の頭線・駒場東大前から徒歩1分の好立地に「Le Ressort」を開業したのは26歳のとき。「自分が成長するためには、できないと思うことに挑戦するのが一番。いま最もできないことはお店を持つこと。だったらやってみようと思った」というのが開業時の心境だ。
     ブーランジェリーとしてのこだわりは、メニュー紹介でも記した通り、「良い素材を使い、丁寧な仕事をすること」。そして、「自分自身がおいしいと思える価値ある商品をつくり出し、それに見合う価格で販売すること」だ。「子どもにおいしいパンの味を伝えたい」という思いも強く、その姿勢は、90cmと低く設定したパンの陳列台の高さにも表れている。
     さて、10年以上、お店をやってみての感想は、「思っていたよりずっと大変」。中でも苦労したのは人材の採用と活用で、オーナーである自分と従業員との、仕事に向かう意識の違いをどう受け止め、お店をどう運営すべきかで頭を悩ませてきた。「いつも思っているのは、その人がいることによって、いまいる組織に変化をもたらすことのできるような人材になってほしいということ。つまり、自ら考え、行動できる人を育てたい。それがお店の成長につながると信じて仕事をしています」と清水さんが経営者としての思いを語る。
     人材育成と組織の成長の好循環をつくるためにいま計画しているのは、2号店の出店だ。その構想は、徐々に固まりつつある。
  • 基本情報
     
    店名 Le Ressort(ル・ルソール)
    住所 東京都目黒区駒場3-11-14-1F
    電話 03-3467-1172
    営業時間 9:00〜19:00
    (土日祝は〜18:00)
    定休日

    月曜(祝日の場合は翌火曜に振替)

    席数

    なし。ただし隣のフジカフェ(20席)で飲み物のオーダーをすれば持ち込み可能

    主な客層

    近隣の住民

    1日の客数 平日 250人 週末 400人
    予算の目安 1,000円
    開業 2006年8月
    HP https://www.facebook.com/ルルソール-228251783964640/
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。