【カツ丼】奏す庵

(東京都/新宿区)

日本の食文化を世界に発信したい…そんな大きな夢とともに、カツ丼発祥の地とされる東京・早稲田に、2016年春に開業した「奏す庵」は、店名が示す通りソースを最大の特徴とするカツ丼「ワセカツ!」の専門店です。シンプルな料理だけに素材選びや調理法にこだわり、できたての状態で提供。食前の桑の葉茶と梅、食後の口直しまで、食べる人への気遣いの光るお店です。

クローズアップメニュー
ワセカツ!丼 980円(税込)
開業後約10カ月間はこれ一品(当初の名前はカツレツ丼)で勝負していたという文字取りの看板メニューで、多い日で1日80食ほども出る。「ワセカツ!」とは、1913(大正2)年、早稲田の洋食店がドイツのシュニッツェルを模したカツレツを日本ではじめて提供したことにちなんだネーミングで、「薄いトンカツ」「早く仕上がる」「ソースに浸す」の3つを特徴としている。ワセカツ!には、厚さ8mmのあつカツと、厚さ4mmのうすカツの2種があり、この「ワセカツ!丼」には、オリジナルの甘辛くスパイシーなソースに浸した揚げたてのあつカツ2枚とうすカツ3枚が乗っている。ご飯は珍しい福井県産コシヒカリをふっくらと炊き、味噌汁は全国的にも有名な福井県のお寺、永平寺が採用している株式会社米五の味噌でだしを使わずに作っている。ほかに、ベースのソースに和がらしをブレンドしてエスプーマ仕立てにしたピリ辛のソースと、お新香、果物がつく。
技のポイント1
北海道産「夢の大地」を2種類の厚さにスライス
メイン素材である豚肉は、北海道の希少なブランド豚「夢の大地」を使用。クリーンな環境で植物性飼料を食べて育った豚で、脂身のうま味が強く、他の北海道産豚肉と同様に冷めてもおいしいのが特徴。これを8mm、4mmの2種類にスライスし、あらかじめ天日干しの塩と小麦粉をふってからバットに並べて冷蔵庫に保管。注文が入ってから衣をつけて揚げる。
技のポイント2
パン粉は目の細かいドライタイプを使用
粒の粗い生パン粉を使う揚げ物店も多い昨今だが、ここでは昔ながらの目の細かいドライパン粉を使用し、からりと仕上げている。
技のポイント3
 
ゴマ油とコーン油をブレンドし電磁波が流れるなかで揚げる
揚げ油は贅沢に、ゴマ油とコーン油を1:1でブレンドして使用。フライヤーは、一見普通の銅鍋ながら油に電磁波を流しながら使うハイテク装備で、水分と脂がしっかり分離されるため、衣に残る油が一般的なフライヤーの2分の1以下。脂っこくないところが女性や高齢者にも好まれている。
技のポイント4
揚げたてのカツをオリジナルソースに浸す
ソースはきわめて標準的なウスターソースをベースに店内でカスタマイズ。甘さに特徴を持たせるために砂糖やグラニュー糖も含めておよそ50種の甘味料で試作した。その中で、しっかり甘いながらスッキリしていて、低カロリーで、なによりもおいしかったレシピを採用している。これを器に入れて揚げ油の脇に置き、揚げたてのカツを手早く浸して提供する。
オススメメニュー1
わらじカツ 750円(税込)
スライスしたロース肉の繊維をジャガードで切断し、さらにパン粉をまぶしながら押し伸ばして揚げることで、よりやわらかく、歯切れよく仕上げた一品。好みによりスライスして提供。「ワセカツ!丼」同様に丼メニューにした「わらじカツ丼」(1,230円/税込)も人気。
オススメメニュー2
ひれ串かつ 700円(税込)
ロース肉中心の同店にあって珍しくヒレ肉を使ったメニュー。「夢の大地」のヒレ肉と長ネギを交互に2本の串に通し、揚げたらオリジナルソースに浸して縦半分にカットして提供する。ヒレ肉の断面が食欲をそそる。
オススメメニュー3
キャベツのおひたし 300円(税込)
ボイルしたキャベツにとろろ昆布と梅肉を乗せてポン酢で味つけ。とてもさっぱりしており揚げ物のおともにぴったりだ。
  • お店紹介
    「ソースカツ丼(ワセカツ!)を通して日本の食文化を世界に紹介するのが夢です」と語る店主の森武彦さん
     学校やオフィスビルが建ち並ぶ早稲田の街にたたずむ、白いのれんが目印の「奏す庵」を訪ね、奥行きのあるゆったりしたカウンター席に座ると、最初に出てくるのは桑の葉茶と梅干し。店主の森武彦さんの出身地である福井県から取り寄せている梅干しは、昔ながらの塩気の強いタイプで、一かけ食べただけで口腔と胃がほどよく刺激される。これで食べる準備が整うというわけだ。
     お茶を飲みながら目の前でカツの揚がるのを見守る。待つことほんの数分。森さんには「カツ丼は大人のファーストフード。できたてをさっと食べられることが大事」という思いがあり、早さをことのほか重視している。だからといって作り置きは一切しない。スピードは肉を薄くスライスすることで追求している。「薄いトンカツ」にこだわるのは、“大正2年当時の日本初のカツ丼”へのオマージュでもある。
     森さんは福井県出身で本業はITコンサルタントだが、「コストダウンに意識が偏りがちな現在の日本の外食業界に新しい風を起こしたい」という思いが募り、思い切って開業した。「この思いに賛同してくださった方々や尊敬する料理人の方々にも意見を伺いながら構想を練り、行き着いたのが、早稲田で生まれ、その後、私の故郷、福井のグルメとして定着したソースカツ丼です。海外のものを柔軟に取り入れ日本的に仕上げたものこそ“和文化”であると私は思います。そういう意味で和食の代表とも言えるカツ丼を、原点であるソースカツ丼のかたちで世界の人に紹介したいのです」と張り切っている。すでに海外への出店計画もあり、準備を進めているという。
     顧客の要望に応え、この春、メニューを大きく刷新。新しく揚げ物単品や一品メニューが加わり、それらを肴にアルコール類を楽しむ人も増えている。また、4月からはお弁当の宅配も始めた。「これからもお客さまのためにあるお店でありたいと思います」と森さんは日々、さまざまなアイデアを練っている。
  • 基本情報
     
    店名 奏す庵
    住所 東京都新宿区早稲田鶴巻町555-19-1F
    電話 03-6302-1648
    営業時間 ランチ 11:00~15:00 ディナー 17:00~22:00(LO)
    定休日

    水曜

    席数

    13席

    主な客層

    女性の一人客、高齢者、
    ビジネスマン

    1日の客数 ランチ 50人 
    ディナー 20〜30人
    予算の目安 食事の人 1,000〜1,300円 
    お酒を飲む人 1,000〜5,000円
    開業 2016年5月12日
    HP http://www.sauce-un.jp/
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