(東京都/港区)
白濁した豚骨ラーメン風なのに豚骨を使っていない、麺は細くしっかりした歯ごたえがあるのに多加水麺、調理はスープづくりも含めてIHで行うなど、意外性に溢れるラーメン店「麺劇場 玄瑛」六本木店。近代と伝統をテーマとした福岡本店、完全予約制で非日常がコンセプトの恵比寿店「GENEI.WAGAN」に続き、2015年秋にオープンしたこのお店のテーマは近未来。調理科学を駆使したレシピでラーメンのイメージを覆す味を提供しています。
-
クローズアップメニュー
-

-
XO醤薫イベリコ豚の玄瑛流ラーメン 920円(税込)
自家製XO醤と自家製ダシ醤油、独特の製法でとった豚のスープを使った看板メニュー。白濁したスープと極細ストレート麺の組み合わせは一見博多ラーメンの様だが、実はスープづくりに用いているのは、スペイン政府によってその飼育法が厳しく定められているイベリコ豚の中でも最高ランクとされるイベリコ・ベジョータ(ベジョータとはどんぐりの意味)のミンチで、獣臭さや脂のしつこさがなくまろやか。その分、XO醤と醤油に使われている干しエビや干し貝柱の風味が活きている。チャーシューはイベリコ・ベジョータのバラ肉を、自家製醤油、自家製ラー油、赤ワインなどをブレンドしたつけ汁につけて真空パックにして味を染み込ませ、スライスしたあと焼いたもの。盛り付けてからバーナーで焼くことで脂のうまみを引き出している。
-
技のポイント1
-
-

-
スープはイベリコ・ベジョータのミンチで少量ずつ炊く
長年の経験から、「一般的な豚骨ラーメンは、大量の豚骨から何時間もかけてスープをとるため人件費と光熱費がかかる。この費用を食材に投資すればもっとおいしいものができる」との考えに行き着き、考案したのが、高級豚肉のミンチでスープをつくる方法。水:イベリコ・ベジョータのミンチを10:1ほどの割合で鍋に入れ、ネギ、ショウガなどの香味野菜を加えて炊き、あくをとり、ブレンダーにかけて漉す。スープづくりにかかる時間は1回40分程度で、1日何度かに分けてつくる。
-
技のポイント2
-
-
-
自家製ダシ醤油をかえしとして活用
本物の醤油を自分でつくりたいと思い立ち、メーカーの研究所で勉強してレシピを完成。そのレシピで知り合いの蔵元につくってもらっているというダシ醤油は、干しエビ、干し貝柱、干しアワビ、昆布、カツオなどの風味が効いている。これをかえしとして用いる。
-
-
技のポイント3
-
-
-
干しエビ、干し貝柱の旨味をイベリコ・ベジョータのオイルで抽出
自家製XO醤は、イベリコ・ベジョータから厨房で抽出したオイルに干しエビ、干し貝柱などを加え、ゆっくりと加熱調理してつくる。2、3日で使い切る分量でつくるので常に新鮮。ラーメンの仕上げにこれをたっぷりかけることで香りが際立ち、うま味が増す。
-
-
技のポイント4
-

-
福岡本店でつくる自家製麺は加水率47%、茹で時間はたった6秒
一般的な豚骨ラーメンの麺の加水率が20数%程度とされるのに対し、「玄瑛」の麺は加水率47%。卵も約10%含んでおり、小麦粉(安定的に手に入る外麦の準強力粉を使用)のグルテンとの相乗効果でモチモチした食感を実現している。店主が自作した製麺機を使い、福岡本店で製造。熟成時間は約2週間。玄瑛流ラーメンではストレートで、醤油ラーメンでは手もみで縮れ麺にして用いる。茹でた麺は光沢があるが、舌触りは少々ざらっとしていて独特だ。
-
オススメメニュー1
-

-
XO醤薫イベリコ豚の醤油ラーメン 820円(税込)
昆布、シイタケ、焼きアゴ、カツオ、ウルメ、サバ、アサリなどからとった澄んだスープで自家製ダシ醤油を割り、スープを持ち上げやすいように手もみで縮れを加えた麺を茹でて入れ、刻みネギ、チャーシュー、水菜をトッピング。玄瑛流ラーメン同様、最後にXO醤をかけ、糸トウガラシを乗せた。
-
オススメメニュー2
-

-
玄瑛流卵かけごはん 380円(税込)
ご飯は店主の実家の農家で生産している「ヒノヒカリ」を使用。これにビタミンE含有量が一般の卵の20倍といわれる「日本一のこだわり卵」をかけ、自家製ダシ醤油(前述)を少量たらした。サイドメニューでありながら同店トップの注文数を誇る人気のメニュー。ラーメンと一緒に注文し、麺を食べ終わったあと残ったスープに入れて食べるのもおいしい。
-
オススメメニュー3
-

-
花椒薫たっぷり野菜のつけ麺(限定メニュー)
グランドメニューのほかに裏メニューもある。これは店主とSNSでつながっている人が限定された10日間の期間内に来店し、正確なメニュー名を告げた場合のみ注文できる。取材時に裏メニューとして提供されていたこのつけ麺は、茹でて氷水で締めた麺に、醤油:みりん:だしを1:1:4で合わせた割り下にイベリコ・ ベジョータの脂で揚げた野菜を漬け込んだものを添え、この野菜の漬け汁に炙ったネギ、チャーシューなどを入れて沸かし花椒をふったつゆを組み合わせた一品。食感がそばを感じさせる自家製麺の魅力がより引き出され、味の染みた野菜、野菜の甘味が活きたつゆともども味わい深い。
-
-
お店紹介
-

-
「料理は、来てくださったお客さまと一緒につくりあげるエンターテインメントです」と語るオーナーの入江瑛起さん(中央)とスタッフの皆さん
「麺劇場 玄瑛」を経営する入江瑛起さんが、20代半ばで勤務先を退職してラーメン業界に転職したのは、あるラーメン店で、ラーメンを食べた人が笑顔になるのを目の当たりにし、衝撃を受けたのがきっかけという。
そのお店に弟子入りしてノウハウを学び2001年に独立。以来、「お客さまの大切な体に入る食べ物をつくらせてもらうのだから、すべてに責任を持てるようでありたい」と、さまざまな食材の特徴や含まれる成分の化学式や化学反応、機器類の仕組みまで勉強し、理論に裏打ちされた知識を身につけ、実践に活かしてきた。必要と思えば各種メーカーの研究室を訪ねて研究。たとえば開業当時、一般のラーメン店にはほとんど導入されていなかった製麺機を店内で使いたいと思い立ったときには、メーカーに足を運んでその構造を理解し、高価な機械と同様の機能を持つ製麺機を自分で組み立て、店内でイメージ通りの麺をつくれる環境を整えた。その製麺機をいまも使い続けている。「疑問を持ったことは解明しないと気が済まないタイプなのです」と入江さん。この性格が功を奏し、他の料理人がやらないことをし、とことん凝ることで独創性を追求してきた。
一方で、より効率的で安定的な経営も目指している。調理の熱源をすべてIHとしているのは、そのほうが光熱費を節約でき、食材への投資を増やせるから。レシピをすべて食材や調味料の正確な重さで管理しているのは、誰がつくっても同様の味ができるようにするためだ。こうしたさまざまな工夫で独自のオペレーションスタイルを構築している。
「玄瑛」の「玄」は、玄人の玄で、黒い色や奥深さを表し、「瑛」の「英」は美しさや輝きを、「王」は玉を意味する。つまり「玄瑛」とは黒光りする玉のような存在のこと。メディアで注目され、多くのファンを持つようになったいまでも、より輝くことを目指し、ストイックにラーメンと向き合っている。
-
-
基本情報
-
店名 |
麺劇場 玄瑛 六本木店 |
住所 |
東京都港区六本木4-5-7
|
電話 |
03-6447-4010 |
営業時間 |
11:30~14:50 (売切れ次第)
|
定休日 |
日曜
|
席数 |
20席
|
主な客層 |
近隣のビジネスマン
|
開業 |
2015年10月27日 |
-
※掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。