【和食】幸せ三昧

(東京都/渋谷区)

旬の食材を中心に前菜からデザートまで、10品前後で構成されるコース料理は、料理人が、その技術とセンス、サービス精神を発揮して作りあげる一つの作品ともいえます。東京・広尾の和食店「幸せ三昧」は、メニューを季節感溢れる6,000円(税別)のおまかせコースのみに絞り、訪れる人に満腹感と満足感を提供しています。

クローズアップメニュー
夏野菜の煮こごり仕立て(6,000円コースの一部)
旬の野菜を器に並べ、だしのジュレをかけて涼しげに仕上げた夏らしい先付(前菜)。茹でたりおひたしにしたりした野菜の中で、カボチャだけ、ごま豆腐風に固めて提供することで、単なる盛り合わせとは違う特徴を持たせている。カボチャの上には湯むきして土佐酢に浸けたトマトが乗り、その周りに茹でたヤングコーン、オクラのおひたし、茹でて薄皮をむいた枝豆、ゴーヤのおひたしが並ぶ。擦りおろしの青ユズの皮が爽やかに効いている。
技のポイント1
 
二番だしのうま味を活かす
煮物などに用いる二番だしは、一番だしで使った特注の削り節(マグロ:カツオ=1:1)と利尻コンブでとる。「夏野菜の煮こごり仕立て」では、カボチャを炊くときや、ジュレをつくるときにこれを利用する。
技のポイント2

 
だしのジュレで涼しさを演出
二番だしを一煮立ちさせたら追い鰹をし、薄口醤油とみりんで調味してゼラチンで固め、ほどよく崩して野菜にかける。氷を思わせるジュレで涼しさを演出。ジュレに透ける野菜がみずみずしい。
技のポイント3


ゴマ豆腐様に固めたカボチャが主役
カボチャは皮をむき、濃口醤油と砂糖で調味した二番だしで炊いてから、つぶしてだしで伸ばしピューレにして葛粉を加え練り固める。これを冷蔵庫で冷やし、カットして盛りつける。
オススメメニュー1
とうもろこししんじょうの揚げ出し(6,000円コースの一部)
スズキの仲間で蒲鉾の材料などとしても使われるワラヅカのすり身と、茹でた後、粒が残る程度にミキサーにかけたトウモロコシをすり鉢に入れ、豆乳を加えて練り、伯方の焼き塩で味を整えたら、流し缶に入れて蒸す。これを、一口大にカットして衣をつけて揚げ、銀餡をかけた。薬味はワサビ。ふんわりした中にツブツブが混じっていて心地よい食感。トウモロコシの甘みと香りも際立っている。「とうもろこししんじょう」はこのほか茶碗蒸しの具や付け合わせなどとして用いることもある。
オススメメニュー2
あゆ一夜干し(6,000円コースの一部)
コンブだしに塩、酒を加え、そこに開いたアユを1時間程度浸け、冷蔵庫に保管して干物にしたものを、サラマンダーで香ばしく焼き上げる。頭と骨はからりと揚げてせんべいにし、肝は焼いて裏ごしし塩味をつけて添えた。アユを1匹まるごと堪能できる一皿。
オススメメニュー3
穴子とわけぎの土鍋ごはん(6,000円コースの一部)
アナゴはさばき、水、濃口醤油、酒、砂糖でつくったタレで煮ておく。土鍋に研いだ米(茨城産コシヒカリ)、酒、塩、薄口醤油で調味したコンブだしを入れて炊き、炊きあがったら、煮アナゴとワケギを乗せて蒸らす。具が均等になるように混ぜたら茶碗に盛る。
オススメメニュー4
赤じそのシャーベット(6,000円コースの一部)
水、上白糖、酢で赤ジソを煮出してシロップ状にしたものを砂糖水で伸ばし、シャーベッド状に凍らせる。これをガラスの器に丸く盛り、みりんで甘酸っぱく炊いたアメリカンチェリーを乗せた。デザートは1品だが、希望者にはもう1品、サービスしている。
  • お店紹介
    「ほっとするような料理を心がけています」と語る店主の中山幸三さん(写真右)とスタッフの皆さん
     中山幸三さんが「幸せ三昧」をオープンしたのは2009年のこと。会社員時代によく訪れていた東京・武蔵小山の「とり将」に27歳で弟子入り。その後、このお店の2代目である笠原将弘さんが恵比寿に開業した「賛否両論」で5年間修行をしてから独立した。「幸せ三昧」という店名は、自らの名前をもじってつけた。
     開業当初から、おまかせコースだけを提供するスタイルは変わらない。ただし、4,000円でスタートしたコースの価格は、魚などの仕入れ価格の高騰に加え、より良い食材を使いたいという料理人としての欲求の高まりもあり、やがて5,000円になり、現在は6,000円に落ち着いている。
     中山さんが常に心がけているのは、「日本人でよかった」と思ってもらえるような、ほっとする味だ。「コース全体を通して多彩な食材を使うこと、野菜と魚の組み合わせを工夫すること、一手間かけることでお客さまに驚きや喜びを感じていただくことなどを考えて仕事をしています」と語る。
     7月のある日のコース内容は、クローズアップメニューで紹介した「夏野菜の煮こごり仕立て」を1品目に、「穴子の飯蒸し」、細くて歯ごたえのあるタイプのもずくを使った「もずく酢」、鶏だんごと冬瓜のすり流しの「お椀」、「お造り」、山椒塩で食べる「揚げ物」(とうもろこししんじょうの天ぷらとタチウオのフライ)、おすすめメニューで紹介した「あゆ一夜干し」、はもと梅を使った「茶碗蒸し」、「カマスの土鍋ごはん」、アイスクリームなどの「デザート」。コース内容は3週間ごとに入れ替えるのが基本だが、「3週間以内に2回以上来てくださる方もいらっしゃるので、そんなときは特別にアレンジしたり、早めにメニューを入れ替えたりしています」と言う。
     繁盛の理由を「師匠の七光り」と謙遜する中山さんだが、8年間、予約者が絶えない実績は見事というほかはない。これからも「幸せ三昧をいいお店にしたい」という一途な思いを胸に厨房に立ち続ける。
  • 基本情報


    店名 幸せ三昧
    住所 東京都渋谷区東4-8-1
    電話 03-3797-6556
    営業時間 18:00〜23:00(最終入店)
    定休日

    日曜

    席数

    18席

    主な客層

    30代〜70代のカップル、夫婦、家族連れ、接待客など

    1日の客数 20人
    予算の目安 8,500〜9,000円
    開業 2009年12月
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。