【ラーメン】味噌らぁめん 一福

(東京都/渋谷区)

東京・初台に開業して27年目の2017年、『ミシュランガイド・ビブグルマン』に選出された「味噌らぁめん 一福」は、女性店主が「自分が食べたいものを」と考案し改良を重ねてきた、味噌汁のような「味噌らぁめん」が評判のお店。脂や塩分を極力抑えつつだしのうま味を引き出した、豊かな風味が特徴です。

クローズアップメニュー
味噌らぁめん 730円(税込み)
店主が子どもの頃から親しんでいた信州味噌4種類と、うま味もコクも一味違うという長崎の麦味噌をブレンドし、酒、ニンニクなどを加えて二晩寝かした味噌ダレがベース。スープは豚、鶏をたっぷり使って炊くが、途中で脂分を濾して取り除くためこってり感はない。その分、炊きながら段階的に加える香味野菜や和風だしが効いている。どんぶりに味噌ダレ、自家製香味油を入れ、スープで割る。麺は中太で微妙に縮れのあるタイプを使用。トッピングはチャーシュー、メンマ、長ネギ、海苔。体にやさしく、毎日でも食べられる一杯だ。
技のポイント1
 

スープは豚、鶏、香味野菜、和風ダシを段階的に加えて炊く

きれいに洗ったゲンコツ、豚足、トリガラなどを水とともに大きな寸胴鍋に入れ、沸騰したら、あくをきれいに取り除く。6時間かけて煮出した後、背脂を濾し、ネギ、タマネギ、キャベツ、リンゴ、ショウガ、ニンニクなどを入れ、火を止めて一晩置く。翌日、干しシイタケ、コンブ、ニボシ、厚削りを加えて出来上がり。1つの素材が際立つのではなく、すべての素材が合わさることでつくり出される複雑なうま味が持ち味だ。
技のポイント2

 
5種類の味噌をブレンドしうま味を引き出す
味噌ペーストは、赤白2種類ずつの信州味噌と長崎の麦味噌、酒、擦りおろしニンニクなどを混ぜ合わせてつくる。5種類の味噌はそれぞれ違ったうま味を持っているので、それらをかけ合わせることで味に深みが出る。
技のポイント3


チャーシューは希少な「しんたま」などを醤油だけで味つけ
チャーシューもスープ同様、脂分を極力抑えることに配慮しており、赤身のかたまりでキメが細かくやわらかい「しんたま」と呼ばれる希少な部位を中心に使っている。つくり方は、ラーメン用のスープを炊くときに一緒に入れて4時間茹で、継ぎ足し継ぎ足し使っている醤油ダレで2時間煮たら、一晩寝かせる。取り出してラップにくるみ、さらに一晩置いてから使う。
オススメメニュー1

囲炉裏麺 1,080円(税込み)

「もう一度絞ったらおいしいお酒ができそう」というほどしっとりしている「八海山純米大吟醸」の酒粕を生かした、やわらかな味が特徴のラーメン。酒粕は予め無調整の豆乳と合わせてミキサーにかけ、ペースト状にして冷蔵しておく。どんぶりに味噌ダレと酒粕ペーストを入れてスープで割り、麺を入れたら、チャーシューの角切り、焼きネギ、長ネギ、水菜、自家製肉味噌をトッピング。肉味噌を徐々に溶かすことで味の変化が楽しめる。また、サクサクした食材も入っており、食感にアクセントを与えている。平日より土日によく出る人気メニュー。
オススメメニュー2

トマトのつけ麺 900円(税込み)

タマネギをよく炒めたところに缶詰のトマトを加えてつくったトマトソースと味噌ダレを器に入れてスープで割り、酢や一味トウガラシで調味してつけ汁をつくる。これに国産小麦「春よ恋」を使用した太麺を合わせた。つけ汁の中には、刻んだチャーシュー、メンマ、長ネギと、ピーナツとサヤから出した枝豆数粒が入っており食感が楽しい。麺には刻んだ大葉がたっぷり乗って爽やかだ。
オススメメニュー3

カレーライス 650円(税込み)/写真はミニカレー 250円(税込み)
ラーメンスープを使ってつくったサイドメニュー。タマネギを炒めたところにラーメンスープと2種類のカレールーを加え、そこに焼いた豚のバラ肉を入れるだけで完成。ラーメンにミニカレーを合わせる人が多いが、カレーライスだけを食べに来る人もいるなど、隠れた人気メニューとなっている。
  • お店紹介

    「開店30周年を目標に、よりおいしいラーメンをつくり続けたい」と語る店主の石田久美子さん(写真右)


     「昨年の夏、お店の片付けをしていたら、スーツ姿の男性グループがいらして『ミシュランです』とおっしゃったんです。青天の霹靂、瓢箪から駒とはまさにこのこと。本当にびっくりしました」
     「味噌らぁめん一福」の店主、石田久美子さんが、『ミシュランガイド2017ビブグルマン』に選出されたときの驚きと喜びを、「いまだ信じられない」といった様子で、こう振り返る。それでも「2020年の開店30周年に向けてありがたい励みになりました。まだまだ頑張らなくちゃ」と笑顔で語る。
     石田さんは専業主婦から転身してラーメン店の店主となった。1990年に開業して間もなくから、メニュー開発、仕込み、調理まですべてを自らこなしてきた。一度完成したメニューも、さらにおいしくなるように改良を重ねている。クローズアップメニューで紹介した「味噌らぁめん」も、当初は石田さんの母親が愛用していた信州味噌だけでつくっていたが、より深いコク、複雑なうま味を求めて長崎の麦味噌を加えたのだという。
     「うちのラーメンはインパクトもなく地味」と謙遜するが、体に良いものを提供することには強いこだわりがある。冒頭で触れたように、脂分や塩分を極力控えているのも健康を考えてのこと。「私自身が食べたいと思えるものを、これからも出していきたい」と言う。
     「一福」が入る前は寿司店だったという店舗は、カウンター席7席と、座敷だったところにつくったテーブル席6つの構成。清潔感があり、ところどころに生花が飾られるなどやすらげる空間になっている。
     「お忙しいなかでのランチタイムだと思いますが、お花を眺めながらラーメンを召し上がっていただき、少しでもくつろいでいただければうれしいです」と石田さん。訪れる人に向けられるこうした思いやりも、同店の人気の秘密なのだろう。
  • 基本情報


    店名 味噌らぁめん 一福
    住所 東京都渋谷区本町2-17-14小泉ビル1F
    電話 03-5388-9333
    営業時間 11:30〜15:00
    定休日

    月曜(月曜が祝日の場合は営業、翌日休み)

    席数

    13席

    主な客層

    平日:近隣のビジネスパーソン 休日:家族連れ

    予算の目安 800円
    開業 1990年10月30日(2012年に現在の場所に移転)
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