【中国料理】蔭山樓

(東京都/目黒区

東京・自由が丘に開業して10年目を迎えた「蔭山樓」は、フカヒレ料理とラーメンを二本柱とするユニークなお店。「ここまで足を運んでいただくためにも記憶に残る味を提供しなければ」と、総料理長が最も得意とするこれら2つに絞り込み、ひたすらおいしさを追求し続けています。鶏のうま味を凝縮したスープと新鮮な素材が織りなす独特の味わいが個性的です。

クローズアップメニュー
フカヒレの姿煮(豪華フカヒレ満喫コース 8,000円(税抜)の一部)
フカヒレのうま味と鶏白湯スープのうま味を融合させた「蔭山樓」を代表するメニュー。中華鍋にサラダ油、紹興酒、鶏白湯スープ、毛湯(マオタン)スープ(いわゆるガラスープ)を入れ、醤油、オイスターソース、塩で調味しながら煮立たせ、フカヒレを投入。スープの味が染み込んだところでフカヒレを取り出し、残ったスープにトロミをつけてフカヒレの上からたっぷりかけて出来上がり。
技のポイント1
味の決め手は手羽先を8時間炊いた鶏白湯スープ
「フカヒレの命はスープ」と言う総料理長が、鶏のうま味を最も効率よく引き出すことのできる材料として用いているのは、丸鶏やガラではなく、手羽先。定量の手羽先を隠し味となる素材とともに寸胴鍋で8時間ほど炊くとトロトロになり、骨と肉の風味が凝縮される。炊き過ぎると臭みが残るので注意する。また、鶏ベースのスープは比較的劣化が早いので、毎日炊くのが基本だ。
技のポイント2

 
フカヒレは蒸してやわらかく、煮てうま味を入れ、スープと融合
フカヒレは予め戻した状態で仕入れるが、そのままでは使わず、大きさや厚みに合わせて適度に蒸してから用いるのがふっくらとやわらかく仕上げる大事なポイントだ。ネギ、ショウガ、紹興酒を入れた水にフカヒレを浸し、ラップをしてせいろで蒸す時間は最低でも30分〜1時間。蒸し上がったら冷蔵庫で保存する(写真左)。注文が入ったらこれをスープで煮るが、このときフカヒレのコラーゲンとスープのコラーゲンをほどよく融合させる。煮る時間のタイミングは微妙で、経験がものを言う部分である。
技のポイント3


蒸し卵を合わせて味と形をバランス良く
フカヒレの下には蒸し卵(スープで割って蒸した卵)が隠れている。茶碗蒸し、あるいは卵豆腐のようにやわらかく薄味で、濃厚な煮汁とのバランスが良い。フカヒレを形良く見せるためにも一役かっている。
オススメメニュー1
フカヒレの刺身入り前菜(コースの一部)
スライスして合わせたタマネギと大葉を皿に盛り、その上にマダイの刺身、そしてフカヒレを乗せる。フカヒレは薄くて歯ごたえのある胸びれ部分を用い、戻したものを味つけしたスープに入れて蒸し、冷やした状態で提供する。こうすることでフカヒレの周囲にゼラチン状のスープが残り風味が増す。模様のようにかけたソースは、バジル、カルパッチョ、醤油とサンショウの3種類。ソースのつけ方によって味の変化を楽しめる。
オススメメニュー2
朝採り蒸し野菜のフカヒレカニ肉あんかけ(コースの一部)
中華鍋に鶏白湯スープを入れてフカヒレとカニ肉を煮たら軽く塩で味つけし、トロミをつけてあんにするが、このとき片栗粉をたっぷり入れてあんを固めに仕上げると野菜とからみやすくなる。野菜は三浦の農家から、その日の早朝収穫した旬のものを直送してもらっている。この日使ったのはオクラ、ニンジン、カボチャ、ジャガイモ、紅くるりダイコン、サツマイモ、ナス、ズッキーニ、ジャンボシメジの9種類で、それぞれみずみずしく味が濃い。トッピングしたコーンの甘み、仕上げにかけた自家製エビ油の香りが効いている。
オススメメニュー3
特大フカヒレ焼売(コースの一部)
豚ひき肉とエビをこねて調味したあんを皮で包んで蒸し、フカヒレを乗せた。醤油にオイスターソースと黒酢を加えたタレがついているが、まずは何もつけずにうま味の詰まったあんの味を直接味わうのがおすすめ。タレをつけるとよりさっぱりした味わいに。
オススメメニュー4
エビマヨ(コースの一部)
一般的なエビマヨとはまったく違ったオリジナリティ溢れる一皿。身の締まった大振りのエビに厚めの衣をつけて白絞油で均一に揚げ、特製マヨネーズソースをかけた。からっと揚げてチーズを振ったお焦げも乗ってボリュームたっぷり。ほかにスイートチリソース、マンゴーチリソースが添えられ、仕上げに揚げて砕いたヘーゼルナッツをトッピング。
オススメメニュー5
鮮魚の広東風姿蒸し(本日のおまかせ/コースの一部)
新鮮な状態で仕入れた魚を、丸ごと蒸し上げる贅沢な一皿。その日によって魚の種類と大きさが変わる。写真は大きく育ったキジハタ。長ネギと一緒にせいろで蒸したキジハタを、レタスを敷いた皿に乗せ、刻みネギをたっぷり盛ったら豆豉、コショウで味つけ。この上から熱々の油をかければ表面がパリッと揚がるとともに、ネギの風味が際立つ。さらに自家製かえし醤油、中国醤油をかけて、色鮮やかなパクチーを乗せて出来上がり。ふんわりした白身とこうばしい皮、香味野菜、甘みのある醤油などが口の中でからまる。
 
オススメメニュー6
 
麺(ハーフサイズ/コースの一部)
「名物こだわり麺の鶏白湯塩そば」「極旨醤油らーめん」「ヘーゼルナッツ風味のTANTAN麺」の3種類から好きなものを選べる。一番人気は鶏白湯塩そばで、フカヒレの姿煮と同じ鶏白湯スープで自慢の塩ダレを割ったつゆは、ゼラチン質が多くクリーミーで濃厚(写真左)。麺は浅草開花楼のモチモチした生中華麺(太麺)を使用している。たっぷり乗った野菜と蒸し鶏との相性も抜群。少し食べたらレモン汁を絞ると味が爽やかに変化する。TANTAN麺は鶏塩湯スープに毛湯スープを加えて軽めにしたうえで自家製チーマージャンを効かせている。
オススメメニュー7
Kageyamarouの杏仁豆腐(コースの一部)
ランチ、ディナー含め、セットメニューの仕上げとして出てくる総料理長自慢のデザート。ベージュがかった色とコクのある甘みが持ち味
  • お店紹介
    「絞り込んだ得意料理で日本一を目指しています」と語る総料理長の蔭山健一さん(写真左)とスタッフの川口さん
    「蔭山樓」のオーナーで総料理長の蔭山健一さんは、千葉県柏市の「知味斎」、東京・新宿京王プラザホテル「南園」、香川・高松京王プラザホテル「南園」、東京・恵比寿の「筑紫樓」、神奈川・横浜ベイサイドマリーナ「LONG」などで腕を振るったあと独立。その後は故郷である千葉県船橋市でラーメン店を営み、おいしいラーメンづくりに没頭していたという経歴を持つ。その後、縁あって2008年に自由が丘に進出し、最も得意なフカヒレ料理とラーメンを専門とする「蔭山樓」をオープンした。
     「開業したての頃はお客さまがあまり入らず、料理とはまったく別の仕事もしながらなんとかお店を維持しました」と蔭山さん。東京、埼玉、神奈川に合計6店舗を展開している現在の盛況ぶりからは、そんな苦労時代があったとは想像しがたいが、「当時から来店してくださり、『おいしい。絶対に大丈夫』と言ってくださった方々に支えられてここまで来ることができました」としみじみ語る。
     こんな蔭山さんのモットーは、良いものをリーズナブルな価格で提供すること。今回紹介した「豪華フカヒレ満喫コース」も、都心のホテルなら倍程度の値段がつきそうな内容だが、「手間と工夫でなんとか頑張っています」と言う。「鮮魚の広東風姿蒸し」を4,800円のコースからラインナップしたりするのも、蔭山さんのサービス精神の表れだ。
     メニューのベースは中華だが、随所に独自の工夫をしていることから「蔭山料理」と称している。この秋には本格派のフレンチシェフが仲間入りすることも決まり、レシピの独創性はさらに深まっていきそうだ。
     
  • 基本情報


    店名 蔭山樓 自由が丘店
    住所 東京都目黒区自由が丘2-8-21
    電話 03-3718-6436
    営業時間 ランチ  
    1部 11:00~12:45
    2部 13:00~15:00
    ディナー 
    平日 18:00~21:30 (L.O 21:00) 土日祝日 17:00~21:30 (L.O 21:00)

    定休日

    年末年始

    席数

    24席

    主な客層

    女性グループ、夫婦

    開業 2008年
    HP http://www.kageyamarou.com/
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。