【スペインバル】渋谷カトルセ

(東京都/渋谷区)

気軽に立ち寄り食事やお酒を楽しめるスペインバルは日本でもすっかり定着し、それぞれがメニューやサービスを工夫しています。東京・渋谷駅南口の「渋谷カトルセ」は、手間ひまかけてつくるスペイン料理の数々と、洞窟のような内装、カジュアルな雰囲気が人気のお店。中でも「海老のカタラン風」は手の込んだ、オリジナリティあふれる看板メニューです。
クローズアップメニュー
名物 海老のカタラン風 1,180円(税抜)
甲殻類のうま味を凝縮したオリジナルメニューにして店長とシェフが「一番のおすすめ」と口を揃える自慢の一品。プリプリのブラックタイガーは存在感たっぷりだが、実はエビそのものは脇役で、主役は2日間かけて仕込む濃厚なアメリケーヌソースと生クリームを組み合わせたクリーミーなソース。単独でおつまみにするのもいいが、バゲットにつけるとソースのおいしさがさらに引き出される。バゲットは「厚切り4カット」と「薄切り8カット」(ともに300円・税抜)があり、この料理にはどちらもよく合う。
技のポイント1
甲殻類のだしを無駄なく使うためローストや炒めの作業をしっかり行う
アメリケーヌソースを仕込むときのポイントは、だしとして用いるオマールエビの頭やブラックタイガーの殻に十分に火を通すこと。そのためにも前者は100℃前後で約2時間ローストし、後者は少量のオリーブオイルで水分が飛ぶまで丁寧に炒める。行程としては、大きな鍋でブラックタイガーの殻約5kgを炒め、タマネギ、ニンジン、セロリの乱切り、ニンニクのみじん切りを入れる。野菜がやわらかくなったらローストしたオマールエビの頭を加え、つぶしながらさらに炒める。ここに少量のブランデーを加えてフランベし、白ワイン、薄力粉、つぶしたホールトマト、水10ℓ、ローリエを入れて煮出す。50分程度煮たら濾し器で濾すが、このとき固形分をできるだけつぶすのがうま味を存分に活かすポイント。さらに濾し器に残った固形分に水を加えて再び濾し、うま味成分を出し切る。その後は全体の容量にして3分の2程度になるまで煮詰め、バターと薄力粉を加えてこげないように煮て濃厚に仕上げ、冷凍庫で保管する。
技のポイント2
 

ニンニク、パセリと一緒にエビを炒める

フライパンでオリーブオイルを熱し乾燥パセリとニンニクのみじん切りを炒めて香りを引き出す。そこにブラックタイガーを入れ、よく色づくまで炒める。
技のポイント3
 

アメリケーヌソースと生クリームの比率は2:1

材料を炒めたところにアメリケーヌソースと生クリームを2:1の比率で投入する。写真では両者を別々に入れているが、通常はあらかじめ合わせたソースを用意しておくことで多数の注文によりスピーディーに対応している。植物性の生クリームを用いているため濃厚ながらもくどさはない。途中で味を確認しながら塩、ホワイトペッパー、カイエンペッパーを適宜加えて微調整する。
技のポイント4
 

まんべんなく鍋肌にあててコクを出す

ソースを鍋肌にあて、ゴムベラでこそいでは混ぜることを繰り返し煮詰めていく。この作業を丁寧に行うことで深いコクが生まれる。直火で熱くしたカスエラに移し、グツグツと煮立てたら乾燥パセリをふりかけて出来上がり。
オススメメニュー1
シーフードパエリア 1人前900円(税抜、注文は2人前から)
パエジャラにオリーブオイルを熱し、ニンニクのみじん切りと一緒にヤリイカとエビを炒めたら、塩、ホワイトペッパーで調味し、一度取り出す。同じパエジャラでタマネギのみじん切りを炒め、お米を加えて味をなじませながら炒めたら、タマネギのソフリット、トマトソース(ホールトマトとみじん切りにしたタマネギ、ニンジン、ニンニク、セロリを合わせてローリエ、オレガノとともに煮詰めたもの)、スパイシーなパエリアソース(チキンコンソメをベースにサフラン、ターメリック、パプリカパウダー、塩、ホワイトペッパーで調味・色づけ)を順次加えていく。生のタマネギは食感とうま味、タマネギのソフリットは甘味として使用している。最初に炒めたヤリイカ、エビと、インゲン、パプリカ、アサリ、ムール貝をトッピングして200℃のオーブンで約12分焼く。ほかに「鶏肉」「イカスミ」「オマール海老」があるパエリアメニューの中で、一番人気が高いのがこのシーフードだ。
 
オススメメニュー2
エビのアヒージョ 880円(税抜)
ニンニク、タカノツメ、ローリエを加えて予め仕込んである風味豊かなアヒージョオイルをカスエラに入れ、エビを入れて沸騰させる。ソフトシェルシュリンプ(バナメイエビ)を使用しているため丸ごと食べることができる。厚切りバゲット(別注文)にオイルをたっぷりしみ込ませれば、うま味を無駄なく堪能できる。
アヒージョオイルはほかのアヒージョメニュー(マッシュルーム、シラウオ、砂肝)のほか、ランチパスタの「ペペロンチーノ」にも用いるため使用頻度が高く、1回に仕込む4ℓが1日でなくなることも多い。
オススメメニュー3
カジョス 780円(税抜)
茹でこぼしを3回以上繰り返して臭みを徹底的に取り除いたハチノスを、丸のままのタマネギ、ニンジン、セロリの葉、ニンニク、ショウガといった香味野菜や、清涼感を出すためのレモンの皮、ローリエ、オレガノ、ホワイトペッパー(ホール)、塩などと一緒に煮込む。ローズマリーや長ネギの青い部分など、臭み消しに役立つものも入れる。3時間ほど煮たらハチノスを取り出し、食べやすい大きさにカットして、刻んだチョリソーサラミと一緒に炒める。ここにパエリアでも使用したトマトソースとヒヨコマメを加え、塩、ホワイトペッパー、カイエンペッパー、チキンコンソメで調味し、ハチノスの煮汁を濾して少量加えて煮込む。
オススメメニュー4
スペイン風オムレツ 980円(税抜)
卵4個を割りほぐし、刻んだベーコン、トマト、茹でたジャガイモ、タマネギを加えて、塩・ホワイトペッパーで調味。これを熱くしたスキレットに流し入れて焼く。このとき強火を使うのが中をやわらかく仕上げるコツ。ある程度火が通ったらオーブンで焼き、ひっくり返して再度オーブンで焼いて、スキレットのまま熱々で提供する。そのままでも十分な味があるが、マヨネーズとケチャップをミックスしたオーロラソースをつけるとより濃厚な味わいが楽しめる。
 
  • お店紹介
    「手づくりの幅を広げていきたい」と言うシェフの小林弘樹さん(右)と「深夜、行き場をなくした方々もお気軽にどうぞ」と楽しげに呼びかける店長の小野澤一輝さん(左)
    「渋谷カトルセ」は、2010年に開店したスペインバル。2015年には株式会社ラークスパーの経営となったが、店名も内装もそのまま引き継いだ。同社は現在、渋谷店の他に中央区・勝どきに「勝どきカトルセ」、ダイニングバー「ニジイロ」の2店舗も展開している。
     バルという業態が珍しくなくなったいま、各店舗には従来以上に個性が求められるようになったが、店長の小野澤一輝さんは、「当店はカジュアルな雰囲気を大切にし、いつでも気軽に立ち寄っていただけるように努めています。また、センター街など繁華街と違って比較的早めに閉店する飲食店の多い南口にあって深夜まで営業していることも、遅くまで働いている人や、2軒目、3軒目を探している方たちに喜ばれています」と言う。深夜には仕事を終えた同業者も多く集まり、交流の場にもなっている。
     一方、料理長の小林弘樹さんは、「アヒージョひとつとっても魚介、きのこ、肉とさまざまあるし、鶏肉のパエリアなど、甲殻類が苦手な人でも食べられるメニューを用意しています。仕込みに手のかかるものはすぐに使えるようにまとめて準備しておき、できるだけ素早く提供できるようにしています」と工夫を語る。他店で10年以上の経験を積み、縁あってラークスパーに入社して半年余りという小林さん、「実はカトルセの厨房でチャレンジしたいことがたくさんあるんです」と話し、パエリアソースのバリエーションを増やすことなどを考えている。
     店内は洞窟を思わせる内装がユニークかつおしゃれ。女性の人気も高く、いわゆる女子会でも頻繁に利用されている。
  • 基本情報
    店名 渋谷カトルセ
    住所 東京都渋谷区渋谷3-10-14−B1
    電話 03-6427-5150
    営業時間 日〜木 11:30〜24:00(ランチ〜16:00、ディナー16:00〜)金・土 11:30〜翌4:00
    定休日

    なし

    席数

    40席(立食なら50名まで可)

    主な客層

    近隣で働く20〜30代の人 男性:女性は7:3 深夜客には同業者も多い

    1日の客数 ランチ 40〜50人 ディナー 40人前後
    開業 2010年11月(2015年4月より現経営者)
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。