【ビストロ】BOLT au crieur de vin

東京都/新宿区

2017年7月オープンの新店ながら、食の感度が高い人々を中心に人気を博して予約困難となっているビストロが東京・牛込神楽坂の「BOLT au crieur de vin」だ。フランス料理の確かな技術をベースにしながら巧みなスパイス使いでスタンダードな料理から新しい魅力を生み出す。とりわけラム、内臓といったひとクセのある食材は仲田シェフの手にかかればとびきりの一品に変身する。「クセを短所ととらえるのではなく、料理人のひと手間で長所にする」ことで食材本来の魅力を伝える手法が仲田シェフのスタイルだ。
クローズアップメニュー
ラムスペアリブ 2,800円(税込)
ラム肉はシェフが得意とする食材のひとつで、今回取り上げるグリル料理の「ラムスペアリブ」と煮込み料理の「ラムシャンクブレゼ」(2,800円)の2品は同店のシグネチャーアイテムともいえる。同店では豪州産ラムのスペアリブをチョイス。「飼育期間が8カ月と長くラム特有のクセがしっかり出ています。日本では風味の穏やかなニュージーランド産のラムチョップが好まれますが、調理次第でそのクセを活かしてより一層おいしく仕上げることができます」。ラム肉と相性の良いクミンの香りをつけてハチミツで肉の味に厚みを与えてしっかりと焼き上げる。肉の味がしっかり表現できているのでソースは不要。トレビス、ルッコラ・セルバチコ、パクチーと香りの強い野菜を付け合わせて相性を高める。
技のポイント1
獣臭の原因となる皮をていねいにトリミング
ラム肉は切り分けずにプレートのまま使用。ラム肉の獣臭の原因となる部分は皮とスジ。皮は残っていると食感も損ねるのできれいにトリミングする。一方、スジは焼きの工程(技のポイント③)でしっかり焼き切ることが獣臭を消すポイントとなる。皮目は切り込みを入れて調味料が入りやすいようにしておく。
技のポイント2
 

 
スパイスをラムにすり込み、1日寝かして味を入れる
ラム肉の重量に対して1%の濃度が目安に塩をふる。次いでクミン、キャトルエピス、ガーリックパウダーを1:0.5:0.2の配合比でラム肉にまぶし、赤ワインビネガーとハチミツをかけたら、両面にまんべんなくすり込む。これをラップなどで密閉して冷蔵庫で1日寝かす。
技のポイント3
 

サラマンダーでしっかり表面を焼く

スペアリブは凹凸があることから、サラマンダーを使ってまんべんなく熱を当てる。両面を4〜5分間かけて焼き色がつくまで焼く。とりわけ裏は骨についているスジをしっかり焼き切ることが、獣臭を消すポイント。
技のポイント4
 

オーブンで中までしっかり熱を通す

170℃に設定したコンベクションオーブンでミディアムの少し前くらいの焼き加減になるまで熱を入れる。肉の状態によって4〜7分間加熱した後、いったん取り出して2〜3分間休ませて肉汁を全体にゆきわたらせる。仕上げに再びオープンに戻して30秒前後加熱し完成、切り分けて提供する。
オススメメニュー1
いくらのゲヴェルツマリネ、セルベルドカニュ、吉田パン 2,100円(税込)
イクラをフランス・アルザス産の白ワイン「ゲヴェルツトラミネール」でマリネしたものを、フランス・リヨンの郷土料理でフロマージュブランにディル、セルフィーユ、黒胡椒といったハーブやスパイスを使った「セルベルトカニュ」を塗ったカンパーニュの上にたっぷり盛りつける。魚卵はワインと合わせると生臭さが立ってしまいやすいが、バラやライチといった華やかな香りが特徴のゲヴェルツトラミネールに漬け込むことで臭みを抑えながら旨みをのこした味わいになり、とりわけ白ワインとの相性がいい。セルベルトカニュはさっぱりとした風味で白ワインとの相性をいっそう高めている。吉田パンのカンパーニュは、工場のある京都からわざわざ取り寄せるほど仲田シェフのお気に入り。自家製の酵母を使用して長時間発酵させており、適度な酸味と旨みが愛用の理由だ。
 
オススメメニュー2
地蛤チャウダー 1,400円(税込)
横幅7〜8cmはある大型のハマグリが存在感たっぷり。チャウダーはレモングラスやバイマックルーの香りと酸味が加えられたオリエンタルな味わいがユニークだ。ハマグリの身にふりかけられたスペイン・バスク地方のスパイス「エスプレット唐辛子」は辛味が控えめでハマグリの後味をすっきりとさせる。チャウダーのベースはムール貝、アサリ、ホンビノス貝などに少量のチキンストックを加えて作るが、具材のハマグリとは異なる旨みを組み合わせることでより複合的な味わいになっている。
  • お店紹介
    「レストランのクオリティをもっと気軽に、居酒屋感覚で楽しんでもらえる店をめざしています」とオーナーシェフの仲田高広さん。
    けやき一枚板のカウンター席9席のみで、仲田シェフの手さばきが間近に見えるライブ感あふれる店づくりが同店の魅力の一つ。コースは設定せず随時内容が変わる25品前後のアラカルトのみ、しかも安いもので500円〜という値付けも、仲田シェフがめざす気軽な店ゆえだ。とはいえ一品一品にはていねいな仕込みと創意あふれるスパイス使いが施され、どれも食べても新鮮な驚きがある。
    今回紹介した料理の他にも、イタリア・ボローニャの伝統的なハム「モルタデッラ」をハムカツに仕立てたり、リード・ヴォーと新潟の辛味調味料「かんずり」を合わせるなど仲田シェフならではの自由度の高さが魅力だ。仲田シェフは調理師学校を卒業後、肉料理に定評がある東京・銀座の老舗ビストロ「マルディグラ」、正当派フレンチの名店として名高い四ッ谷の「レスプリ・ミタニ・ア・ゲタリ」で修業した後に渡仏を経て同店をオープン。準備期間中には赤坂の老舗酒場「まるしげ夢葉家」でも腕も奮ったが、それぞれスタイルの異なる店で習得したエッセンスを存分に発揮している。
    また「僕にとって料理とお酒は切ってもきれないもの」と仲田さんが言うだけにアルコールの品揃えもバラエティに富み、計100種を揃えるワインや食後酒だけでなく、日本酒や焼酎もそれぞれ5種前後を常備している。
    営業は奥様と2人で切り盛りしており、これが肩肘はらずに食事を楽しめるアットホームな雰囲気を醸成。来店客の平均滞在時間が3時間と長いのも納得だ。
    「今は日々の営業で手いっぱいですが、いずれは料理教室を開きたいと考えています。男性のみ、カップル、子ども向けなど客層ごとに内容を変えたものを構想中です」と語る仲田さんは、まるで料理を媒介にヒトとの出会いや繋がりを楽しんでいるかのようだ。
  • 基本情報
    店名 BOLT au crieur de vin
    住所 東京都新宿区箪笥町27 神楽坂佐藤ビル1F
    電話 03-5579-8740
    営業時間 17:00〜24:00
    定休日

    毎週月曜日、第2・4火曜日

    席数

    9席

    主な客層

    40〜50代の男女

    一日の客数 20人
    予算の目安 6,000〜7,000円
    開業 2017年7月
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。