【洋菓子】Patisserie Hiroya Minamisawa(ヒロヤミナミサワ)

東京都/杉並区

南澤寛也さんが25歳で開業した人気店。常時10~14種類のケーキがショーケースをにぎわしているが、なかでもチョコレートケーキのバリエーションが豊富で評判を集めた。そんな中でもう一つの人気商品がサバラン。サバランはフランスの伝統菓子として知られるが、ポーランドで発祥したババがルーツ。かつて日本の洋菓子店でも定番商品としてショーケースに並んでいた。一時期見かけることが少なくなっていたが、最近再び注目され、その人気を盛り返している。「Patisserie Hiroya Minamisawa」の「サバラン」は、一風変わった瓶詰タイプ。ラム酒のシロップを染み込ませたブリオッシュの上に、それとほぼ同量のクリームがたっぷり詰まっている。あまりの人気に、現在は販売を数量限定の完全予約制に切り替えている。
クローズアップメニュー
サバラン 670円 (税込)
オーナーシェフの南澤さんが修業していたフランス・フォンテーヌブローの店のスペシャリテを、独自にアレンジした一品。直径7.5cmの瓶の中に、ラム酒のシロップを染み込ませたブリオッシュを詰め、そこへ追いラム酒を回し入れて、クリームをたっぷり絞っている。クリームには、マスカルポーネチーズをブレンド。ムースのようにしっかりした重みがあるのに、思いのほか口どけがいい。チーズのコク深い味わいに、マダガスカル産バニラの香りが鼻孔をくすぐる。ブリオッシュを口に入れると、ラム酒のシロップがあふれ出て、甘く芳醇な香りが華やかに広がる。毎月初めの営業日から予約受付を開始し、限定100個に達したら終了。販売(受け取り)は第3土・日曜日のみ。
技のポイント1
シロップをたっぷり吸わせるため極限まで水分量を抑えた生地を作り出す
材料は事前にしっかり冷やしておく。特に国産の粉は暑さに弱いので、冷やす工程は必須とのこと。ドライイーストを水で溶き、そこへ全卵、薄力粉とそれより少し多めの強力粉を加え、全体がなじんだら砂糖を混ぜる。撹拌機に入れたら高速で回転させ、グルテンを出す。生地の表面に膜が張ったところで、バターをプラス。もう一度こねて膜が張ったら、撹拌機の回転速度を落とす。ゆっくりこねながら、香りづけのオレンジオイルを入れ、さらに少しずつ回数を分けて水を加えていく。最初からすべての水を入れてしまうとうまくこねられず、グルテン形成もままならなくなる。後半で生地の状態を見ながら、少しずつ水を加えることがもっとも重要だ。極限まで水分量の多い生地を作ることで、焼き上がり時の表面の皮が分厚くなり、シロップを染み込ませてもくずれないものに仕上がる。
生地を型に入れ、約40℃のオーブンで30分~1時間程度、発酵させる。発酵後、型のまま180℃のオーブンで20分焼く。型から外して、さらに180℃のオーブンで数分乾燥焼きをすれば、身の詰まったブリオッシュが出来上がる。
技のポイント2
 
ラム酒のシロップ作りの要は糖度。糖度計を用い、ジャスト21%になるまで煮詰める
鍋に水とグラニュー糖を入れて火にかけ、少し温まったらラム酒とアニスを加え、少し泡が立つ程度の弱火で煮詰めていく。アルコールを飛ばし、ある程度煮詰まったところで、糖度計を使い糖度の割合を図る。
糖度がきっちり21%になったところで、ブリオッシュを入れ、ふるいを落し蓋代わりにのせて約40分、とろ火にかけてラム酒のシロップを染み込ませる。
 
シロップを吸ったブリオッシュは、3倍程の大きさに膨らむ。それを網付きバットに上げ、余分なシロップを落としながら一晩寝かせる。 
技のポイント3
クリームはマスカルポーネチーズでコクをプラス。緩すぎず固すぎないよう仕上げる
あらかじめ卵黄とグラニュー糖をボウルに入れ、泡だて器でかき混ぜておく。鍋に生クリームとマダガスカル産バニラを入れて火にかけ、香りを引き出したらグラニュー糖を加えてしっかり沸騰させる。それを先ほどの卵液に加えた後、82℃まで温める。
鍋に戻して、軽くとろみが出たところでバットに移す。空気が入らないよう表面にぴったりとラップを張り、冷蔵庫へ。キンキンに冷やしながら、味をなじませるため1日寝かせる。
ここからが仕上げ。撹拌機のボウルにマスカルポーネチーズと数回に分けて生クリームを入れ、ダマがなくなるまで泡だて器で混ぜ合わせる。マスカルポーネチーズを入れるのは、クリームの比重をコントロールするため。生クリームだけだと味わいも口当たりも軽くなり、ラム酒を染み込ませたブリオッシュとの調和がとれない。また、マスカルポーネチーズの濃厚さで、甘さを感じすぎないよう計算されている。冷蔵庫で冷やしていたものを加え、泡だて器でなじませるよう混ぜたら、撹拌機でかき混ぜながら泡立てる。
写真のように、ちょっと引っかかる程度の固さまで仕上げる。あまり混ぜすぎると、クリームとマスカルポーネチーズが分離してしまうので、この見極めが大事だ。シロップを吸ったブリオッシュ生地をガラス瓶に入れラム酒を回しかけたものに、クリームを絞り入れれば「サバラン」の完成。
オススメメニュー1
フレジエ 590円 (税込)
ピスタチオのムースリーヌクリームと、イチゴのコントラストが美しい新作ガトー。ムースリーヌクリームは、イタリア・シシリー産の高品質なピスタチオペーストをメインに、ゲランド岩塩やキルシュなどで仕立てられている。大粒のフレッシュイチゴをムースリーヌクリームで包み込み、パートダマンドを練り込んだスポンジでサンド。上層に生クリームをあしらっている。ピスタチオの柔らかい香りと特有のコクがあり、イチゴの甘酸っぱさを際立たせる絶妙な甘さ加減。ゲランドの塩が効いたキレの良い甘さに仕上がっている。  
オススメメニュー2
チョコレートケーキ4種(※手前から時計回りの順)
チョコレート 550円 (税込) グランマルニエ 530円 (税込) ビター 580円 (税込) エスプレッソ 530円 (税込) 
ガトーの中で、絶大な人気を誇るチョコレートケーキの数々。毎日、何かしらのチョコレートケーキが登場する。なかでも、「チョコレート」が一番人気。生チョコのガナッシュの上に、マジパンを練り込んだココアのスポンジとチョコレートムースを交互に2層ずつ重ねた王道スタイルだ。ガナッシュのコク深さやスポンジのほろ苦さ、ムースのまろやかさなど、さまざまなチョコレートの味わいを楽しむことができる。「グランマルニエ」は、グランマルニエ風味のココアスポンジに、口どけのいいガナッシュ・オ・ブールを重ねた一品。「ビター」は、ヘーゼルナッツのプラリネとチョコレート、フィアンティーヌを混ぜた土台がサクサクと心地よい食感。土台の上に薄くガナッシュを敷き、チョコレートのババロア、ビスキュイ、チョコレートのババロア、ガナッシュを重ねている。ビターなチョコレートの旨味を噛みしめるごとに、ヘーゼルナッツの風味が広がっていく。「エスプレッソ」は、チョコレートとコーヒーのマリアージュ。ホワイトチョコレートベースのコーヒームースと、イタリアンコーヒーを使ったシロップを染み込ませたスポンジを組み合わせている。チョコレートの風味と共に広がる、コーヒーの芳醇な余韻がたまらない。
オススメメニュー3
塩バニラクッキー 650円 (税込)
材料は薄力粉、バター、砂糖、水にゲランドの塩とマダガスカル産バニラのさやのみ。奇をてらう食材は一切入っておらず、シンプルな直球勝負のクッキー。卵を使っていないので、卵アレルギーの人も安心して食べられる。また、卵を使っていないことでできる、ザクザクとした歯ごたえのある食感も大きな特長だ。素朴な味わいで、噛むごとにゲランド塩のマイルドな塩味が、ちらちらと顔をのぞかせる。1パック10枚入り
 
  • お店紹介
    「壁や壁板など、内装のほとんどを自分ひとりでやりました」と笑顔で語るオーナーパティシエの南澤寛也さん。菓子作りもおひとりで真摯に向き合い、日々菓子への研究に余念がない。
    「Patisserie Hiroya Minamisawa」は、JR総武線「西荻窪」駅北口からバス通りを10分程歩いた閑静な場所にあり、ダークブラウンの外観に白いひさしが映えるシックなたたずまいが目を引く。オーナーパティシエの南澤寛也さんは、25歳でこの店を開業した若手のホープだ。大阪の製菓学校を卒業後、老舗和菓子店「御菓子司 柏谷葛城堂」で修業。和菓子だけに留まらず、自由な発想で幅広く挑戦できる洋菓子界にも興味を抱き、伝手もないまま単身渡仏した。フランスのフォンテーヌブローにある菓子店に採用され、持ち前の行動力と柔軟さで洋菓子の技術や知識を瞬く間に習得。帰国後は大阪へ戻り、ショコラショップで、さらに腕を磨いた。その後、知り合いに誘われ、東京・三鷹市の「三鷹の森ジブリ美術館」でパティシエとして従事。1年後には、いつか東京で店を開きたいという夢を実現した。
    一つの菓子を生み出すまで地道な試作を重ね、その菓子に合う素材を見出すためとことん吟味する。北海道産バターやマダガスカル産バニラ、ゲランドの岩塩など、採算度外視の高品質素材であろうが、自分が納得したものしか使わない。それら素材の良さを損なわないよう、作業中の室内は20℃以下をキープ。そして、粉の配合をはじめ、素材の比率や加熱温度、糖度などを数値化し、徹底した環境のもとで菓子作りを行っている。
    常時10~14種類のケーキがショーケースをにぎわしているが、なかでもチョコレートケーキのバリエーションが豊富。特に意識したわけではなく、「いろいろなケーキを作る中で、人気の商品を残していったら、チョコレートケーキが多かった」のだそうだ。いつしか、「チョコレートケーキが充実の店」と口コミで広まり、その評判を聞きつけたチョコレート好きが数多く訪れるようになった。現在は、焼き菓子を中心としたオンラインショップの展開を構想中。若手らしい発想と吸収力で、今後ますますの躍進ぶりが期待される。
  • 基本情報
    店名
    Patisserie Hiroya Minamisawa
    住所 東京都杉並区西荻北4-24-11
    電話 03-6913-5157
    営業時間 11:00~19:00
    定休日

    水・木曜日

    席数

    なし

    主な客層

    30代以上の女性、地域在住の会社員や年配者、近隣在学の女子大生など

    予算の目安 1,500~2,000円
    開業
    2016年10月7日
    HP http://www.hiroyaminamisawa.com/
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。