「Patisserie Hiroya Minamisawa」は、JR総武線「西荻窪」駅北口からバス通りを10分程歩いた閑静な場所にあり、ダークブラウンの外観に白いひさしが映えるシックなたたずまいが目を引く。オーナーパティシエの南澤寛也さんは、25歳でこの店を開業した若手のホープだ。大阪の製菓学校を卒業後、老舗和菓子店「御菓子司 柏谷葛城堂」で修業。和菓子だけに留まらず、自由な発想で幅広く挑戦できる洋菓子界にも興味を抱き、伝手もないまま単身渡仏した。フランスのフォンテーヌブローにある菓子店に採用され、持ち前の行動力と柔軟さで洋菓子の技術や知識を瞬く間に習得。帰国後は大阪へ戻り、ショコラショップで、さらに腕を磨いた。その後、知り合いに誘われ、東京・三鷹市の「三鷹の森ジブリ美術館」でパティシエとして従事。1年後には、いつか東京で店を開きたいという夢を実現した。
一つの菓子を生み出すまで地道な試作を重ね、その菓子に合う素材を見出すためとことん吟味する。北海道産バターやマダガスカル産バニラ、ゲランドの岩塩など、採算度外視の高品質素材であろうが、自分が納得したものしか使わない。それら素材の良さを損なわないよう、作業中の室内は20℃以下をキープ。そして、粉の配合をはじめ、素材の比率や加熱温度、糖度などを数値化し、徹底した環境のもとで菓子作りを行っている。
常時10~14種類のケーキがショーケースをにぎわしているが、なかでもチョコレートケーキのバリエーションが豊富。特に意識したわけではなく、「いろいろなケーキを作る中で、人気の商品を残していったら、チョコレートケーキが多かった」のだそうだ。いつしか、「チョコレートケーキが充実の店」と口コミで広まり、その評判を聞きつけたチョコレート好きが数多く訪れるようになった。現在は、焼き菓子を中心としたオンラインショップの展開を構想中。若手らしい発想と吸収力で、今後ますますの躍進ぶりが期待される。