【ハンバーガー】delifucious(デリファシャス)

東京都/目黒区

日本と米国の食文化を代表する「寿司」と「ハンバーガー」がまさかのドッキング!? 寿司職人ならではの技術をふんだんに採り入れた、和テイストたっぷりのフィッシュバーガー専門店です。シェフの工藤慎也さんは、ミシュランガイドで2つ星を獲得した「銀座 青空(ハルタカ)」で務めていた腕ききの寿司職人。仕入れの目利き、丁寧な仕込み、絶妙な調理技術で新感覚のグルメバーガーを提案しています。
 
クローズアップメニュー


昆布〆フィッシュバーガー 1,000円(税抜)
見た目はハンバーガーですが、一口囓ると出汁の香りが口の中いっぱいに広がります。フライにしている白身魚は昆布〆にしてあり、旨みが濃厚。綿実油で揚げたフィッシュフライは衣はサクッ、身はフワッとした食感で、白身魚の繊細な風味を損なわずに揚がっています。タルタルソースの代わりに塗られているのは出汁をたっぷりきかせた豆腐ソースで、これが「和」のジューシー感の決め手。さらに千切りキャベツと一緒に細かく切ったタクアンのコリコリとした歯ごたえが絶妙でオリジナリティの高いハンバーガーになっています。寿司店でお馴染みの「ガリ」を添えて提供するところもユニークです。
技のポイント1(鮮魚を昆布〆にする)
 

揚げたときに香りが飛ばないよう昆布の旨みをしっかり入れます

白身魚は寿司店にも卸している馴染みの仲卸業者から近海で水揚げされた高品質なものを厳選しています。魚種はメダイやオナガダイ、コショウダイなど季節や水揚げ状況などで変わり、取材時は長崎で獲れた4キロと大型のメダイ。鮮魚は丸体で仕入れてシブイチの状態までおろしますが、ポイントは皮をギリギリまで薄く引くこと。皮のすぐそばの部分がもっとも旨みが濃いからです。
 
昆布は北海道産の真昆布を使用。あらかじめ料理酒を水で割ったものに浸してもどしておき、しっかり挟み込みます。この状態で3日ほどおいて魚の中まで昆布の香りを入れていきます。〆る時間は魚種やサイズによって調整しますが、昆布の風味は繊細なため、油で揚げて食べた時に昆布の香りが感じられるように考慮しながら〆る時間を計算しています。
 
技のポイント2(豆腐ソースをつくる)
 

和テイストの軸になるのが、滑らかな舌ざわりと濃厚な出汁の味

絹ごし豆腐10丁は一晩重石をして水抜きしてから裏ごしします。
 
これに出汁1,630ml、煮切った薄口醤油とみりん各60ml、牡蠣醤油30ml、塩20gを加えて、沸騰させない程度に温め、葛粉200gを入れてかき混ぜてトロミをつけます。この量で50食分のソースができます。隠し味に牡蠣醤油を加えてコクと風味をプラス、これがハンバーガーらしい「ジャンク感」を表現します。葛粉は保温、保水性が高く時間が経っても離水せずなめらかな舌ざわりを維持できます。ただ冷ます過程で静置したままにしておくと表面だけ固まって膜のようになってしまうため10分おきにかき混ぜる必要があります。
 
技のポイント3(油で揚げる)

 

白身魚の繊細な風味を損なわない工夫を随所に施しています

ツーオーダーでサクの状態から80g前後にカットし、片面にだけホワイトペッパーを振ります。すりおろしたヤマトイモと小麦粉を水で溶いた衣に切り身をくぐらせて生パン粉をまぶし、180度の油で3分30秒揚げます。穏やかな香りと辛さのホワイトペッパーを隠し味に振ることで白身魚の存在感がアップします。また白身魚のフワっとした食感を最大限引き出すため、衣に卵を使わず、ヤマトイモを代用。揚げ油にクセのない綿実油を選んだ理由も、やはり白身魚の繊細な風味を損なわないため。昆布〆のフィッシュフライが主役となる様々な工夫が商品力のポイントになっています。
技のポイント4(サンドする)
 

炭火の香ばしさをまとったバンズでたっぷり野菜とともに挟み込みます

バンズをカットして中面を炭火で軽く炙り、断面には無塩バターと甘口の醤油を煮詰めたバター醤油を塗って香ばしさをつけます。
 
 
フィリングは千切りキャベツと細かく切ったタクアンを和えた「キャベタク」、レモンを軽く絞ったフィッシュフライ、豆腐ソース、レンコン、カイワレダイコンの順で積み上げていきます。キャベタクは炒めたキャベツの千切りに細かくタクアンを加えて塩とブラックペッパーで調味。キャベツを少ししんなりさせることでタクアンのコリコリ食感が引き立ちます。レンコンは出汁、薄口醤油、みりん、塩でシャキシャキ感が残る程度に煮ています。バンズは東京・高田馬場のベーカリー「馬場FLAT」に特注したもの。重視したのは歯切れの良さと小麦の香りが豊かな風味。味そのものは主張しすぎない穏やかな甘さに仕上がっています。
オススメメニュー1

出汁巻き卵ドッグ 800円(税抜)

ドッグパンに出汁巻き卵1本を丸ごと挟んだユニークな見た目です。卵は2個を使用して出汁、塩、みりん、薄口醤油を加えて銅鍋で巻いていきます。調味はオーソドックスですが、卵が固まるぎりぎりの量の出汁を含ませて、ふわふわの食感に仕上げています。ドッグパンには生クリーム、メープルシロップ、マヨネーズ、カラシを合わせたハニーマヨソースを塗って出汁巻き卵との味わいのバランスを調整しています。
オススメメニュー2
漬けマグロチーズバーガー 1,500円(税抜)
2018年秋から投入した新メニュー。キャベタクの上に乗せたぶ厚いカツは漬けマグロにゴルビージャックチーズを挟み込んで揚げたもの、その上にスライスしたアボカド、昆布茶で調味したダイコンの鬼おろしに刻んだ大葉、炒りゴマで和えたものをバンズで挟みます。かねてから日本の代表的な魚であるマグロを使ったハンバーガーはオープン当時から検討していたものの、商品化までにはかなりの試行錯誤があったそうです。ポイントはハンバーガーらしい価格と品質のバランス、そしてオリジナリティ。本マグロを使いたいが目玉が飛び出るほど高くなる。長い葛藤の末にキハダマグロをチョイスしたわけですが、味を補完する目的とアメリカンな味を打ち出すために米国でポピュラーなゴルビージャックチーズを挟み込んでカツにするというアイデアが浮かんだことから商品化の道が開けました。
マグロは煮切ったみりんと濃口醤油、臭み消しと味にパンチをつけるためにスライスしたニンニクを加えた調味液で漬けにします。ゴルビージャックチーズをチョイスした理由は「某国の大統領がお気に入りらしいという話を聞き、話のネタにもなるな、と(笑)」。

オススメメニュー3
江戸前アジフライバーガー(南蛮ソース) 1,000円+100円(税抜)
アジフライバーガーは通年提供していますが、冬は東京湾で漁獲されるアジが旬なことから期間限定で「江戸前」とネーミング。また夏季は島根産のブランド魚「どんちっちアジ」を使用するなど、季節ごとに旬のアジを厳選しています。アジは開きにして塩〆にしておき、注文が入ったら衣をつけメッシュの細かいパン粉をまぶして、綿実油で揚げます。アジフライのソースは広島産のお好みソースをベースにチャツネなどで甘みを加えた「甘口」、京都ツバメ食品のオリソースを加えた「辛口」、またプラス100円で炒めた白ネギ、フレッシュなニンジンとピーマンを米酢、出汁、醤油、みりん、と酒を煮切ったものに貝の出汁を加えた調味液と和えた「南蛮ソース」から選べます。

 
  • お店紹介

    「今後は新作バーガーの開発や産地とのコラボレーションなどを積極化させます」と意気込むシェフの工藤慎也さん(左)

     「delifucious(デリファシャス)」は“めちゃめちゃ美味しい!”という意味の造語。シェフの工藤慎也さんは「学生の頃は音楽、ファッション、スポーツ、アートはアメリカのカルチャーが大好き、でも刀や鎧、職人技といった日本の古いものもカッコイイなと思っていました」と語りますが、そんな自身の感性をとことん追求するような人生を送っています。中学卒業後に大工、トラックの運転手を経て23歳で東京・銀座の老舗寿司店に弟子入りして修業をはじめ「銀座 青空」で務めて腕を磨きました。その後、米国ロサンゼルスの高級寿司店に勤めて正統な寿司文化を発信。そして帰国後には、今度は寿司で培った技術でアメリカの食文化の代表でもあるハンバーガーに挑んでいます。
     「寿司職人が作るフィッシュバーガー」というコンセプトこそ斬新ですが、それを「美味しい!」というレベルまで完成度を高めるまでには、かなりの試行錯誤を繰り返したようです。「ごはんと合わせて美味しい料理を、そのままパンに置き換えるだけではダメ。食材や調理法は日本料理にこだわりながら、どうパンに合うレシピにしていくかが大きな課題でした」と工藤さん。そうした姿勢は、たとえば「昆布〆フィッシュバーガー」の豆腐ソースで伺えます。「魚のフライといえばタルタルソース。でもタルタルソースをベースにいくら考えても和のハンバーガーにはならないんです」。ポイントとなったのが、出汁の味を前面に出すこと、そこから豆腐ソースが生まれました。
     お店は東京・中目黒の駅前繁華街を抜けた一角にあり、平日は近隣住民や会社員、週末は遠方から訪れる目的客で200人近くを集客しています。シニアや小さなお子様連れのお客も多いことから、仕入れる食材は産地までこだわり、安全で安心なものを選んでいます。壁は銭湯を思わせる白ベースのタイル張りですが、天井はコンクリートむき出しでインダストリアルな雰囲気。席数が9席と少ないこともありテイクアウト注文が5割を占めています。
     2019年秋に渋谷へ新規出店が決まったことから、2018年夏にセントラルキッチンを開設して仕込み作業の強化を図りました。「今後は定期的に新作バーガーを発表したり、産地とのコラボレーション企画を積極化させたい」とさらなる意欲を見せています。
  • 基本情報

    店名 delifucious
    住所 東京都目黒区東山1-9-13
    電話 03-6874-0412
    営業時間 12:00〜21:00
    定休日

    水曜日

    席数

    9席+スタンディング4席

    主な客層

    平日は地元住民や近隣会社員、週末は目的客

    予算の目安 1,000〜1,999円
    1日の客数 平日100人、週末200人
    開業 2016年12月
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。