【餃子】餃子の店 おけ以

東京都/千代田区

中国では茹でて食べるのが一般的な餃子を、こんがり焼いて食べる「焼餃子」として日本独自の発展を遂げたのは戦後間もない頃のこと。1954年(昭和29年)創業の老舗「おけ以」も、最初期から焼餃子を看板商品に据えた店として知られています。餃子の商品バラエティは焼餃子のみとして1日200食を売りあげています。「ミシュランガイド東京」の5,000円以下で優れた料理と価格以上の満足感を得られると評価されたレストランに与えられるビブグルマンに2018年、2019年と2年連続で選ばれる実力店です。
 
クローズアップメニュー


餃子 ギョーザ 600円(税抜)
毎日仕込んだ200食の餃子が必ず売り切れる看板商品です。餃子のポーションは6個入りですが、焼成前で1個27g、1人前162gにもなるほどボリューム満点。皮のモチモチ食感と、非常になめらかな舌ざわりの餡の組み合わせが絶妙。食べ始めは優しくあっさりした味ですが、食べ進めるほどに旨みが増していく、奥深い旨みと最後まで美味しく食べられる味が半世紀以上愛される理由です。レシピこそ創業当時と同じですが、餡の熟成方法を変えたり、仕上げ油の回しかたを変えるなど、試行錯誤しながら改良を加えてより美味しい餃子を追求しています。
 
技のポイント1(生地づくり)
 

小麦粉にゴマ油を練り込んで風味高い皮に仕上げます

独特なベージュ色の理由はゴマ油。小麦粉2.5kgに対してゴマ油400gを入れていますが、これがおけ以の焼餃子ならではの香りのもととなります。これに熱湯1.4ℓを加えて練り、もっちりした弾力ある生地を作ります。練り終えたら棒状に伸ばして30分ほど寝かしたら、皮1枚分ずつカットしてさらに半日寝かします。
技のポイント2(餡づくり
 

ペースト状に練って一晩寝かして奥深い旨みを引き出します

豚バラ肉のみの挽肉6kgにゴマ油1ℓとすりおろしたショウガ250g、白6黒1の割合に配合した胡椒、塩を加えてなめらかなペースト状になるまで練って一晩寝かせます。これが独特な餡の食感の理由です。翌日は8mm角に刻んだ白菜24kg、ニラ2.4kgを加えて練り込みます。白菜は手作業で刻んでいきますが、そのままでは刻んだ野菜が飛び散ってしまいやすいため、切る前に2分ほど茹でて軽くしんなりさせてからカットします。カットした後は水分を絞りますが、葉が厚い冬場は強めに、夏場は弱めに絞って調整します。
技のポイント3(包む)

 

包んだ後に冷凍庫で寝かすことで皮のモッチリ感が増します

熟成させた生地に打ち粉をふって直径9cm前後の円形に伸ばしていきます。中央は小さなコブができるように、端は薄くなるように伸ばして餡を包んで端を重ねた部分だけが厚くなりすぎないように配慮しています。
 
餡の量は16g前後とボリュームたっぷり。包み終えたらラップをかけずに冷凍庫に入れて数時間寝かせます。これは急速に冷やすことで皮に餡の水分が浸透してしまう前に飛ばすことができるため。焼成前の餃子を触ってみると硬く凍っていますが、これが独特なもっちり食感を生みだすのです。
技のポイント4(焼く)
 

沸騰した湯に餃子を並べて蒸し焼きしていきます

円形の餃子鍋は鉄板の厚さが9mm、一度に最大12人前、計72個を焼くことができます。鍋を強火にしたら水を入れ、沸騰したら鍋の外側から餃子を並べていきます。湯の量は餃子が1/3が漬かるくらいが目安です。
 
 
並べ終えたらフタをして蒸し焼きにします。3分ほどでフタをずらして半分ほど開け、水分を飛ばしていきます。適宜フタの位置をずらしたり、鍋を回したりしながら全体の火の入り具合や蒸らし具合が均質になるように気をつけています。焼きはじめから8分程度で鍋の水分がなくなったら弱火にして白絞油を鍋の中央に入れて全体に馴染ませていきます。餃子の表面をパリッと焦がすためですが、油を餃子に直接かけないのでさっぱりとした食後感の餃子に仕上がります。
 
オススメメニュー1

湯麺(タンメン) 680円(税抜)

昔ながらの常連客は「ギョウタン」と呼んで、餃子と組み合わせて注文することの多い定番の売れ筋商品です。旨みがありながらあっさりしたスープは朝と昼の2回炊いて雑味のない味を追求しています。トンコツ10kgと鶏ガラ7.5kgを入れた50ℓサイズの寸胴いっぱいに水をはって1時間30分ことことと炊いたところで長ネギの青い部分と刻み生姜をたっぷり加えてさらに2時間ほど煮たらネギを取り除いて使用します。麺は埼玉の豊華食品に特注した幅広の縮れ麺で、焼きそばも同じ麺を蒸して使用しています。具は白菜、モヤシ、豚バラ肉で、注文が入ったら中華鍋で具をスープで軽く煮込んで塩、コショウで調味して丼に注ぎます。
オススメメニュー2
木穉炒飯(玉子チャーハン) 740円(税抜)
その日炊いたご飯を使い、強火でさっと火を通してしっとりした食感に仕上げるのがおけ以流。ラードにタマゴ1個分を溶き入れて固まってきたところにご飯を投入します。強火で炒めながら細かく刻んだ長ネギと豚肉を加え、塩、コショウ、老酒で調味して仕上げます。シンプルな調味ながらも奥深く、また食べたくなる優しい味わいが特徴です。
オススメメニュー3
猪肝炒韮菜(ニラレバ) 720円(税抜)
夜の食事客に人気の一品料理で、ビールのつまみとして注文するお客も多い。豚レバーは注文を受けてから醤油と老酒で下味をつけてから片栗粉をまぶして揚げます。その後に揚げたレバーとざく切りしたニラを、醤油、塩、コショウ、老酒でさっと炒めます。ツーオーダーで揚げたレバーはプリッとした鮮度感のある食感で、コッテリしすぎない優しい味わいは共通です。
 
  • お店紹介

    「どうしたらもっと美味しくなるだろうかと日々考えながら餃子を作りつづけています」と三代目店主の馬道 仁さん。

     戦後復興まっただ中の1954年(昭和29年)、中国から帰国した田中ヒロ子さんが東京・神保町のさくら通りに開業。諸説あるものの、中国で茹でて食べるのが一般的だった餃子を「焼餃子」として提供し始めた最初期のお店としても知られています。わずか5〜6席の小さな中華定食店でしたが、看板商品の餃子が評判を呼び、やがては宴会場もある規模にまで拡大させました。1988年(昭和63年)には現在の飯田橋に移転し、創業者の長男の田中啓一さんが二代目店主として営業していましたが、2005年(平成17年)に健康上の理由から店に立つことが困難になり、先代の頃から親交のあった馬道晴康さん親子に経営を託し、現在は息子の仁さんが担っています。
    馬道仁さんは工務店を営んでおり自身も「おけ以」の常連客。ご自身にとっても子どもの頃から親しんだ味ではありますが、料理も飲食店経営ももちろん初めてのことでした。一時は看板商品の餃子が1日40食しか出ない苦悩の日々が続きましたが仁さんはレシピを変えることなく、仕込みの工程で様々な試行錯誤を繰り返し、商品のブラッシュアップを図りました。当初は肉を練ったらすぐに野菜を合わせていた餡づくりの工程を、肉だけ練って一晩寝かして熟成させてから野菜を投入する、包んだ後の保管を冷蔵庫から冷凍庫へ変える、といった具合です。そうした工夫を繰り返して餃子のクオリティを磨き上げ続けた結果、少しずつ客足が増え、今では繁盛店になりました。
    今では「ミシュランガイド東京」にも紹介され、連日200食を売る餃子の名店として遠方から訪れるお客や外国人観光客も増えてきました。「将来的には冷凍餃子の商品化にもチャレンジしてみたいですね」と。
  • 基本情報

    店名 餃子の店 おけ以
    住所 東京都千代田区富士見2-12-16 富士見フラワーハイホーム
    電話 03-3261-3930
    営業時間 11:30〜13:50(L.O.)、17:00〜20:40(L.O.)
    定休日

    日曜、第3月曜日、祝日

    席数

    26席

    主な客層

    平日は近隣の会社員、土曜日は目的客や地元住民

    予算の目安 1,300円
    1日の客数 200人
    開業 1954年(昭和29年)
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。