【洋菓子】Pâtisserie & Boulangerie HARU

東京都/江東区

「Pâtisserie & Boulangerie HARU」は、オーナーシェフ・パティシエの長谷川哲夫さんが得意とするチーズケーキの種類が豊富で、地元のみならずチーズケーキ好きの間では知名度の高いお店です。そんな中で、今回取り上げるティラミスは、バブル時代に一世を風靡し、“スイーツブーム”の走りといわれたスイーツ。コーヒーとリキュールに浸した生地と、マスカルポーネチーズのザバイオーネクリームを重ねたものが一般的ですが、ひと味違う長谷川さんのアレンジが効いたティラミスをご紹介します。
 
クローズアップメニュー


ティラミス 480円(税別)
振りかけられたコーヒー粉末が、深呼吸したくなるほどかぐわしいアロマを放ち、ガナッシュの濃厚な味わいが後を引く大人のティラミス。ホイップクリームやマスカルポーネムースでまろやかになりすぎる味を、ガナッシュをプラスすることでコクとキレのある仕上がりにしているのが長谷川さん流。マスカルポーネムースは形状を維持しているのが不思議なくらい柔らかく滑らかな食感で、口の中でとろけるとチーズのコクが優しく広がっていきます。たっぷりと盛られたホイップクリームも甘さ控えめで口当たりが軽く、後味すっきり。コーヒーのほろ苦さやガナッシュの濃厚な風味が加わることで、マイルドな甘味や酸味に苦味や深みを与えています。
技のポイント1

スポンジ生地にコーヒーシロップを均等に染み込ませる工夫

写真のボウルに入っているのはコーヒーシロップです。このコーヒーシロップの作り方は次に紹介しますが、その前にスポンジ生地を作ります。常温に戻した卵と卵黄を溶きほぐしたボウルを直火で人肌程度に温めます。別のボウルに粉砂糖とアーモンドパウダー、人肌に温めた卵液を入れ、ハンドミキサーで泡立てます。さらに別のボウルに卵白を入れ、こちらもハンドミキサーで攪拌。これにグラニュー糖を2回に分けて加え、角が立つくらいしっかり攪拌してメレンゲを作ります。3分の1のメレンゲを前述のボウルに入れ、ゴムベラでさっくり混ぜます。薄力粉を振り入れ、残りのメレンゲも加えて手早く切るように混ぜ合わせます。オーブンシートを敷いた天板にこの生地を流し、予熱しておいた170℃のオーブンで焼き上げること約8分。常温まで冷まし、直径5cmの抜き型で抜いておきます(写真で手に持っているもの)。
 
インスタントコーヒーにグラニュー糖を混ぜ、熱湯を注いでコーヒーシロップを作ります。熱湯を使用するのは、水だと沸騰した時点で容量が変化してしまうから。それほど分量には、細心の注意が必要です。約50℃まで冷ましたコーヒーシロップに、スポンジ生地を数十秒程度浸します。この時点で、生地の中は写真のような状態。網の上に置いて余分なシロップを落とし、さらに浸透させるためバットに移して冷凍します。生地はガナッシュやムースの間に埋め込むように重ねるので、冷凍して固まれば作業がしやすくなるのも利点の一つです。
技のポイント2

長谷川さん流ティラミスの要、ガナッシュ作り

冷たい鍋に、国産マスカルポーネチーズと生クリームを入れて火にかけ、焦がさないよう鍋肌からかき回して沸騰させます。この時、鍋からは目を離さず、常にかき回すのがポイントです。
 
火から下ろし、ベルギー「カレボー」のクーベルチュールチョコレート(ミルク)にかけて、ゴムベラで軽くかき混ぜます。しばらく置いておき、クリームとチョコレートの温度を合わせたら、泡立て器で攪拌して乳化させます。
 
乳化したら、道具をゴムベラに持ち替え、ボウルの中央からつなげていくように混ぜていきます。ここではまだ温かい状態です。ガナッシュを絞り出し器に移し、冷やしておいたセルクルに絞り出します。
 
ガナッシュに冷凍しておいたスポンジ生地をのせ、軽く沈む程度に押し入れます。この時、2本指で、生地を回しながら入れていくと上手に収まるそうです。その上から、もう一度ガナッシュを絞り出したら、セルクルごと冷蔵庫で冷やしておきます。
技のポイント3


 

マスカルポーネムースを滑らかに仕上げるコツ

常温に戻して溶いた卵黄に水、ジュレ・デセール、グラニュー糖を加えて、泡立て器で合わせます。それを熱湯で湯せんしながら、白っぽくなるまで時間をかけて混ぜていきます。湯せんから下ろし、さらに空気をいっぱい取り込むように攪拌。気泡を調えるイメージで、少し硬くなるまで混ぜ合わせます。マスカルポーネムースを作るうえで重要なのが、このパータ・ボンブ作り。辛抱強く混ぜ合わせることで、口当たりに大きな違いが出るそうです。

 

続いて常温に戻しておいたマスカルポーネチーズを、泡立て器で滑らかになるまでほぐします。そこへ前述のパータ・ボンブを2回くらいに分けて混ぜ合わせたら、泡立て器をゴムベラに持ち替えて滑らかになるまで混ぜていきます。


 
6分立てのホイップクリームを3分の1くらい加えて、ゴムベラで混ぜ合わせます。なじんだところで、それを残りのホイップクリームに入れてふんわりと混ぜればマスカルポーネムースの出来上がり。絞り出し器に移しておきます。


 
先ほど冷やしておいたセルクルを冷蔵庫から出し、マスカルポーネムースをセルクルの3分の2程度の高さまで流し込みます。そこへコーヒーシロップに浸したスポンジ生地を回しながらムースに沈め、蓋をするように残りのムースを絞り出します。


 
セルクルから出し、周りにラップを巻いたら、ホイップクリームをたっぷり絞ってデコレーション。最後に、茶こしでコーヒーの粉末を振りかけます。ちなみにコーヒーの粉末は、オリジナルのモカブレンド。コーヒー豆を微粉にして使用しています。ココアパウダーを使用している店も多いですが、この店ではコーヒーの粉末で香り高く仕上げています。
オススメメニュー1

フロマージュセゾン 420円 (税別)

クリームチーズとリコッタチーズを滑らかに練り上げ、しっかり焼き上げたチーズタルト。その上にクレーム パティシエール(カスタードクリーム)、ホイップクリームを重ね、上面が見えないほどぎっしりと季節のフルーツがトッピングされています。写真のフルーツは、ピーチパイン。桃のように華やかで甘い香りが鼻孔をくすぐり、丸みのある甘味が広がります。パイナップル独特のイガイガした刺激がなく、繊維が細いので食べやすいのが特徴。トッピングのフルーツは、1年を通してイチゴが多く、春先はデコポン、トンプソン(マスカットの一種)、ブルーベリー、夏はシャインマスカット、秋にはリンゴなどに変わります。
オススメメニュー2
ショコラ オランジュ 420円 (税別)
ジャンドゥーヤをサンドしたダックワーズの土台に、アーモンドペーストとフィヤンティーヌ、チョコレートを合わせたもの、オレンジとチョコレートのムースを順に重ね、ジャンドゥーヤのクリームで仕立てています。いろいろなチョコレートの味わいが楽しめる一品。オレンジは控えめで、チョコレートの芳醇な香りが引き立っています。フィヤンティーヌのサクサク感や、ナッツの風味もいいアクセントになっています。
オススメメニュー3
エンガディナー 200円 (税別)
パート シュクレのザクザクとした歯ごたえと、ヌガーのねっとりと伸びのある柔らかさがクセになる一品。一般的なエンガディナーは、ヌガーをサンドした状態で生地を焼き上げるため、ヌガーと境目の生地に焼きムラのような白っぽい部分ができてしまいますが、このエンガディナーは均等に焼き色がついています。そこが、長谷川さんのこだわりポイント。生地を焼き上げてから、ヌガーを挟んで仕上げているのです。クルミ入りのヌガーを常温に戻してから冷蔵庫で10~15分程冷やし、生地のみで焼き上げた温かいパート シュクレで挟んでいます。どこを食べてもパート シュクレの心地よい食感が楽しめるだけでなく、ヌガーに余計な熱が入らないことで特有の柔らかさが生まれるようです。
 
  • お店紹介
    「チーズが好きで、(修業時代から)趣味でいろいろチーズケーキを作っていたら種類が増えました。いつかチーズケーキを出す店をやりたいと思い、2017年にこの店を開業しました」と語るオーナーシェフ・パティシエの長谷川哲夫さん。
     「Pâtisserie & boulangerie HARU」は、常時20数種の生菓子が季節ごとに顔ぶれを変えてショーケースをにぎわし、いつ訪れても心ときめくラインナップで迎えてくれる総合パティスリー。焼き菓子も30種類を超え、小さなお子さんが喜ぶキャラクターのバースデーケーキから豪華なウエディングケーキまでアントルメも充実しています。多彩なスイーツがそろっていますが、中でも中心となるのがチーズケーキ。オーナーシェフ・パティシエである長谷川哲夫さんのチーズ好きが高じて、スフレフロマージュやNYチーズケーキ、バスクチーズケーキなどチーズケーキの種類が増えていきました。そんな長谷川さんの経験を活かした、レシピ本『チーズ好きのパティシエが教える 濃厚チーズケーキ』(旧名:リュバン チーズワールドの濃厚チーズケーキ)が出版されています。また、パルミジャーノレッジャーノやカマンベール、キャステロブルーなどチーズを使った焼き菓子もあり、ギフトにおすすめです。
     長谷川さんは日本菓子専門学校を卒業後、神奈川県横浜市の「木かげ茶屋」や「パティスリー アトリ ヨコハマ」で修業を重ね、繁盛店のノウハウを習得。さらに「パティスリー モンサンクレール」で辻口博啓氏のもと、約8年間腕を磨きつつ、2店舗の統括シェフも務めました。そうして培った知識や技を活かし、「Pâtisserie & Boulangerie HARU」では地元に根差した素材でリーズナブルな菓子作りに力を注いでいます。現在、店舗の拡大を予定しており、2号店出店も計画中。「高級感のあるブーランジェリーも展開したい」と、意欲を語る長谷川さんです。
  • 基本情報



    店名 Pâtisserie & Boulangerie HARU
    住所 東京都江東区東陽5-31-22 大興ビル1階
    電話 03-6458-7223
    営業時間 10:00~19:00
    定休日

    月曜日 ※祝日の場合は営業

    席数

    なし

    主な客層 地域在住の主婦を中心とした30~40代の女性、男性ビジネスマン
    予算の目安 1,700~1,800円
    開業 2017年4月27日
    HP https://www.haru-patissier.com/
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。
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