【日本料理】二子玉川 せき亭

東京都/世田谷区

「二子玉川 せき亭」は、ファミリー層が多いことで知られる二子玉川の街にありながら、ビジネスパーソンの支持を得ている数少ない店のひとつ。寿司と天ぷらを中心としたコース料理は、季節の食材と旬の味わいを大切にしながら、ときに斬新なアイデアで驚きと新たな味の発見を提供してくれます。今回は、毎月一新するコースメニューの中から旬の食材を活かしたお料理をご紹介。店主の関斉寛さんにこだわりと創意工夫についてお話をうかがいました。
 
クローズアップメニュー


五色トマトと新生姜の炊き込みご飯(コースの一部)
赤、オレンジ、黄色、緑、黒、五色のトマトを今が旬の新生姜、ベーコンとともに炊き込んだ彩り鮮やかな炊き込みご飯です。トマトやベーコンといった“洋”の食材を使いながらも、丁寧な下拵えを施し、昆布だしで炊き上げることで和食の味わいに。シンプルな工程ですが酸味と甘味と旨味、塩味がバランスよく入った一品となっています。
技のポイント1

色とりどりのトマトで見た目だけでなく味わいも豊かに

五色のトマトを使うのは、色の種類によって見た目だけでなく味わいや栄養素が異なることから。トマトはコーン油で素揚げし、氷にとってから皮をむき下味を入れます。高温調理することでトマトの糖度が増し、また、皮を剥くので食べやすく、トマトが苦手な方やお子様でも召し上がりやすい味に仕上がります。

 
技のポイント2
 

ベーコン、新生姜、トマトを米とともに昆布だしで炊き上げる

ベーコンはコロッとした賽の目に切り、赤身の部分と脂身を適度に混ぜます。新生姜は千切りに。トマトと昆布だしのグルタミン酸、ベーコンのイノシン酸、コーン油のコクがひとつにまとまって「うま味」が生まれます。味つけは、薄口醤油とみりんを少々。トマトの糖度に加えて、みりんをほんの少し入れることで素材の甘みが引き出され、咀嚼したときに口の中で味わいが広がります。
技のポイント3



炊き上がりに、さらにトマトを足して三つ葉を彩りに

米は一合よりやや多めの約230g、だしはトマトの水分を考慮して少なめの170ccで炊いています。米は高知県産のヒノヒカリを使用。「炊き込みご飯は、だし料理」との考えから、具材や調味料を足して味が完成することを念頭に、甘味や粘りが少なめの米を選んでいます。炊き上がりに、素揚げして下味をつけたトマトの残りと三つ葉を加えてさっくりと混ぜ合わせ、飯碗に盛ります。
オススメメニュー1

季節の八寸(コースメニューの一部)

懐石では八寸(約24cm)四方の木盆に海の幸山の幸を数種類盛って供する「八寸」。せき亭の八寸は、毎月変わるメニューの中でも華やかで、趣向を凝らした一皿です。左上から、モロヘイヤのおひたし(たたき山芋、とびこ、糸がき添え)、もずくのゼリー寄せ、ばい貝の含ませ煮(青のり銀餡がけ)、枝豆のブランデー煮、半熟味付け卵、カマス昆布締めの棒寿司、空豆のかき揚げ、新さつまいものレモン煮。半熟味付け卵は、醤油と土佐酢で味付け。枝豆のブランデー煮は、温かいだしにブランデーを加え枝豆を漬け込んでいます。枝豆と空豆が揃うのはこの時期だけ、調理方法と味付けを変えて2種類の豆を一皿に盛るという試み。
オススメメニュー2
鯛と鮪のお造り(コースメニューの一部)
明石の鯛と本鮪の刺身。鯛は白い部分が好ましいので、腹の身を厚めに切りつけて重ね盛り。鯛は活け締めのプリッとした食感のあるものを使用しています。寿司の場合は熟成させて酢の酸味と合わせますが、お造りの場合は素材そのものを新鮮な良い状態で、塩とすだち、わさびとともに。
本鮪は角造りにします。刺身の切りつけは、素材の繊維や、お客様の咀嚼の回数を考慮して大きさや切り方を決めています。切り身が薄すぎると物足りず、咀嚼の回数が多すぎると生臭みが出ることも。鮪はブロックで仕入れているため、油紙を巻き、氷の中で寝かせて熟(な)らします。ときどき状態を見て、空気に触れさせることで熟成を促し、物によっては1週間寝かせる場合もあります。
また、煮切り醤油も店で作っています。昆布と鰹節の旨味を加えて煮詰めることで、とろんとした醤油に仕上がり、刺身のおいしさをさらに引き立てます。
オススメメニュー3
鱧と丸茄子の椀物(コースメニューの一部)
旬を迎えたばかりの淡路産の鱧は、朝締めの新鮮なものを使っているので細かく骨切りをするとだしの中で花のように身が開きます。丸茄子は素揚げに。本来、懐石の椀物は脂が浮くことを嫌って揚げずに使いますが、茄子は揚げたほうがおいしいので、敢えて揚げたものを使っています。
椀物のだしはメジマグロを使った鮪節で。鮪節は酸味が特徴で、マイルドな味わいです。だしを取るときには軟水を使い、60度くらいで引き上げます。だし取りには温度が大変重要で、火が入りすぎると味が強くなりすぎ、火入れが足りないと旨味が出てきません。引き上げたらすぐに氷を当て、揮発しないように冷まします。
調味は塩と香りをつける程度の薄口醤油のみ、純粋に素材の味を楽しんでいただけるように味を設計しています。香りづけには出始めたばかりの青柚子。酸味は梅肉を使って、「鱧に梅」という王道の仕上げを施しています。
 
  • お店紹介

    「日本料理の基本を守りつつ和食の世界に新しい風を吹き込みたい」と話す店主の関斉寛さん(中)と、一人前の料理人を目指すせき亭のスタッフ

     弱冠28歳で世田谷区等々力に魚料理をメインに据えた和食居酒屋「うおいちばん」をオープン後、2014年以降、東急大井町線沿線の自由が丘、二子玉川、上野毛に毎年1店舗ずつさまざまな業態の新店をオープンしてきた関斉寛さん。飲食業界に入ったきっかけは学生時代のアルバイトで言われたお客様の「ありがとう」のひと言から。以来、飲食業に興味を持ち、調理専門学校で学んだ後に和食の道へ。35歳となった現在は自身の経営する店舗で包丁を握るほか、バングラデシュや中国などへ赴き、和食の文化を世界に伝える活動にも携わっている。
    「二子玉川 せき亭」はコースを中心とした和食の店だが、伝統的な日本料理だけでなく、関さん自身のアイデアを盛り込んだ料理も楽しめる。また、華やかな盛り付けも関さんの料理の特徴。季節感を取り入れた大胆なプレゼンテーションは目にも楽しく、女性客に喜ばれている。
    寿司と天ぷらをコースの主軸に据えたのは「両方に力を入れているお店は少ない」から。寿司専門店とも天ぷら専門店とも異なり、両方に対して専門的に取り組んでいる。懐石だけ、天ぷらだけ、などお客様の好みに合わせて料理を提供している。
     近年は、YouTuberとして毎週動画をアップする活動も。オーナーで社長でありながらインフルエンサーという新しい料理人像を作り上げ、飲食業の裾野を広げ、業界を活性化したいと考えている。YouTubeを見て関さんの姿勢に共感し、その人柄を知り、入社希望者からメッセージが届くこともある。自身が体験した昔ながらの料理人修行から、現代にマッチしたスピード感のあるOJTを実践、即戦力の人材育成にも務めている。もちろん、YouTubeで披露している料理の技と味を体験すべく、店を訪れるお客様も増え続けている。
  • 基本情報

    店名 二子玉川 せき亭
    住所 東京都世田谷区玉川3-9-1 第3明友ビル2F左号室
    電話 03-6432-7867
    営業時間
    ランチ  11:30~14:30 (L.O.14:00)
    ディナー 17:00~22:30 (L.O.21:30)
    年末は12月29日まで年始は1月2日からの営業となります。
    定休日

    不定休
    基本的にご予約のみ対応となりますので、お問い合わせの程ご確認ください。

    席数

    15席(カウンター10席 完全個室1室最大5名様まで)

    主な客層
    ランチ おもに女性(30〜80代)
    ディナー 会食、接待目的のビジネスマン、週末は夫婦連れも
    予算の目安 10,000円〜15,000円(ディナー)
    開業 2015年4月
    HP http://www.natomics2010.com/
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。
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