(東京都/目黒区)
クラシックでボリュームたっぷりなフランス料理を気軽に堪能できる店と高い評価を得ている東京・目黒の「レストラン ユニック」。とりわけ肉料理には定評があり、ジビエや熟成肉など季節ごとにラインアップを変えながらバラエティ豊かな肉料理を揃えています。中井シェフの人柄を反映するかのように、お店も料理も華美なところはいっさいありませんが、盛られた料理には本質を追究した結果からしか生まれないシンプルな美しさが感じられます。
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クローズアップメニュー
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沖縄県産アグー豚皮付きバラ肉のコンフィ、スパイスの香り 3,510円(税込)
コンフィはフランス料理の調理法でもオーソドックスなものの1つ。かつては低温の油で長時間加熱する方法が一般的でしたが、現代ではスチームコンベクションを使った真空調理も普及してきています。沖縄県産アグー豚をチョイスした理由について中井シェフは「皮付きの肉を使って表面のクリスティアンな食感を表現したかったのです。国内で皮付きの豚肉を扱っているのは北海道・九州・沖縄県。その中でもアグー豚は、霜降りの入り具合や肉の甘みも気に入っています」とのこと。皮の部分は噛んだときにバリッと音がするほどの歯ごたえで、身の部分のとろけるような柔らかな食感とのコントラストが絶妙。スパイスは控えめで肉の旨みの引き立て役に徹しています。ソースは鶏手羽先をベースに水から煮だしたもので、ていねいに布で漉して濁りのないつややかなブラウンソースに仕上げています。付け合わせのジャガイモのピューレは下ゆでした後に燻製してからなめらかに仕上げており、香ばしい薫香が肉料理の脇役らしいアクセントになっています。
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豚肉の皮目だけにミートテンダーで穴を開けていきます
豚肉の皮にミートテンダーで穴を開けていきます。針の深さは皮下脂肪のところまで。肉まで穴を開けてしまうと調理中に身が崩れてしまいやすくなってしまいます。皮目に塩とブラックペッパーをふり、スパイスを軽くすり込むようにまぶします。スパイスはクローブ、カルダモン、シナモン、コリアンダー、ジンジャーを配合したもの。反対側は塩とブラックペッパーのみをふります。これにつぶしたニンニクひとかけとタイムを添えて真空パックします。
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低温でじっくり加熱後、3〜4日寝かせて味をなじませます
真空パックした豚肉は90℃に設定したスチームコンベクションで6時間じっくり加熱します。パック内では皮面だけにまぶしたスパイスが肉汁ととけあって全体に味がまわっていきます。加熱を終えたら、粗熱をとったあとに冷蔵庫に入れて3〜4日間寝かせて全体に味をなじませていきます。

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技のポイント3 焼き込み

遠火でじっくりと皮目を焼いてクリスティアンな歯ごたえに仕上げます
冷蔵庫から取り出して室温に戻した豚肉を1皿ぶんの大きさにカットしてサラマンダーでグリルしていきます。皮目を上にして焼成中に豚肉が倒れないようアルミホイルつくった台に乗せ、できるだけ遠火で焼くことで皮目が均質に焼き上がります。12分程度かけて皮目をこんがり焼いたら、側面を上にして1〜2分ずつ焼いていきます。皿に盛り付けた後に、アルミホイルに落ちた肉汁を皮目にかけて旨みを戻し、ツヤも出します。

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オススメメニュー1
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炭火焼きした鴨とフォアグラのパテアンクルート 2,160円(税込)
古典的なフランス料理で、高い技術が必要となるパテアンクルートも中井シェフの定番。パイ生地を型に合わせて成形し、豚挽肉、フォアグラ、鴨ムネ肉を詰めて200℃のオーブンでじっくりと加熱。その後にコンソメのジュレを流し込んで3日間ほど冷蔵庫で熟成させてようやく完成します。カットした時の断面が美しく映えるように工夫されていますが、何よりそれぞれの肉色の美しさが絶妙な火入れ加減を物語っています。フォアグラと鴨ムネ肉は軽く炭火焼きしてから使うことで個性をプラス。「日本人は古くから肉でも魚でも炭火焼きで食べていますから、炭火の香りが味の評価にプラスに働くのです」と中井シェフ。仕上げにピスタチオオイルを塗って提供しますが、副菜やソースなどは一切なしの直球勝負。「余計な飾りをつけなくても美しいと思える料理を作っていきたい」と語る中井シェフの美学が表れた一皿です。
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オススメメニュー2
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チョコレートと黒ゴマのテリーヌ 870円(税込)
「黒と黒を掛け合わせたビジュアルから発想しました」という一品は、カカオ濃度の高いチョコレートのテリーヌの中に黒ゴマのペーストが入っています。ごく低温でじっくりと加熱してしっとりとした質感に仕上がっています。濃厚な味の掛け合わせでもあるのですが、ぎりぎりまで甘さを控えてあるので後味は重くありません。黒の印象を強調させるために添えたのは自家製のバニラアイス。冷たい味がすっきりとした食後感につながっています。
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お店紹介
「今のスタイルはやりたいことのほんの一部。これからも新しい可能性にチャレンジしていきたい」とオーナーシェフの中井雅明さん
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手間暇を惜しまずつくりながらも、それをことさらに飾り立てない。伝統的なガストロノミーのエッセンスを軸にした骨太なフランス料理が持ち味の「レストラン ユニック」。オーナーシェフの中井雅明さんは青山の「ラマージュ(現・ラウンジ アンクルハット)」など都内のフランス料理店で修行した後に渡仏、ミシュラン2つ星を獲得した「エレーヌ・ダローズ」で魚・肉部門の責任者を2年間務めました。「フランスに行ったのは本場の肉料理を習得したかったから。そのため魚部門の責任者だった時はさっさと自分の仕込みを終わらせて肉部門を手伝っていました。日本では経験できない種類、量の肉を料理できたことで肉質に合った仕込みや火入れがすぐわかるようになりましたね」と仲井シェフは語る。帰国後は老舗フランス料理店の料理長を経て、2013年に「レストラン ユニック」を開業しました。
東京でも指折りのジビエ料理の名店としても知られています。「フランス料理でも四季の移り変わりを表現したい。季節によって仕入れられるものが変わるジビエはそうした店のコンセプトにマッチしているのです」と中井シェフ。取材当時のメニューにも、イノシシのバロティーヌ、ブレス産鳩の炭火焼き、月の輪熊とフォアグラのパイ包み焼きといった料理が揃っていました。もちろんジビエだけでなく、仕入れ状況によって和牛の熟成肉や、アナゴ、オマールエビを使った料理もオンメニューします。
席数は21席ほどで、中井シェフはカジュアルな出で立ちで作りたての料理を自らサーブするなど肩肘張らない雰囲気も持ち味。内装もテーブルクロスなし、カウンター越しから中井シェフが手際よく調理する姿を見ることができ、本当においしいフランス料理を求めるお客様が遠方からも集まります。
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基本情報
店名 |
レストラン ユニック |
住所 |
東京都目黒区目黒3-12-3 松田ビル1階 |
電話 |
03-6451-0570 |
営業時間 |
18:00~22:30(L.O.)、ランチは金〜日のみ1日1組限定予約制12:00〜14:00(L.O.) |
定休日 |
月曜日
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席数 |
21席
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主な客層 |
食の感度が高い30代〜50代男女 |
予算の目安 |
1万円 |
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※掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。
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