【洋食】レストラン香味屋

東京都/台東区

創業は大正14年(1925年)、下町の情緒あふれる根岸で間もなく100年目を迎える老舗の洋食店です。3世代、4世代にわたって通うお客さまも多く、また弁当や出前といったリクエストにも対応する「下町の洋食屋さん」として愛され続けています。提供する料理は手間暇をかけて丁寧に作りだされる本格的な西洋料理。洋食店にとっておいしさの要であるデミグラスソースは、戦後にレストランとして再興した二代目が作り上げた味を大切に守りつづけています。
 
クローズアップメニュー


メンチカツ 2,200円(税込)

二代目が考案し、三代目が復活させたレシピを守り続ける、人気看板商品のひとつ。パリッとクリスピーに揚げられた衣にナイフを入れると中からたっぷりのジュース(肉汁)がジュワッとあふれでるほど。1切れほおばるたびにジューシーな肉の味わいを堪能できます。1個およそ90gとハンバーグ並みのサイズも圧巻ですが、塩分もスパイスも控えめの優しい味つけで、お子さまからお年寄りのお客さまでも食べ疲れすることなくたいらげてしまいます。下に敷いた美しく深みのある色合いのソースは半世紀以上継ぎ足しながら受け継がれているデミグラスソース。こちらも奥深いコクながら、味わいの印象は軽やか。どれだけたっぷりつけて食べても上品なおいしさを損ないません。
技のポイント1


肉粒が潰れるまで練り込むのがジューシーな仕上がりのポイント

メンチカツのタネは1回につき5〜6kgを仕込みます。合挽肉と豚挽肉は7対3の割合で合わせ、炒めたタマネギは挽肉の総量に対して2割、2Lサイズの全卵はキロ当たり2個、これに自家製の生パン粉、塩、ブラックペッパー、ナツメグ、ガーリックパウダー、セロリパウダー、マスタードパウダーを加えて練っていきます。合挽肉は脂肪分が多めになるよう精肉業者に発注し、豚挽肉は国産豚の肩ロースを使用しています。炒めタマネギはごく軽く火が通っている程度で止めている点が特徴で、甘さを引き出しつつ生の風味も感じられます。また生パン粉はサンドイッチに使用する角食パンの外側の耳の部分を使用していますが、水でふやかしてから使うのがポイント。牛乳を使うと加熱時に焦げて雑味につながりやすいことから水を使うようになったそうです。スパイス類はあくまでも隠し味として、どれもごく控えめに入れるのがポイント。それが食べ飽きない工夫です。

 
こねのポイントは、肉の粒が潰れてきたくらいまでしっかり練ります。しっかり結着させることで揚げたときにジュース(肉汁)が外に出ないようにするためです。こね終えたら、冷蔵庫で5〜6時間ねかせます。
技のポイント2

 

細かめに店内挽きした生パン粉で包み、肉の旨みを閉じ込めます

タネは1個90g。空気を抜きながらまとめたら衣の食感を軽くするために強力粉を薄い膜をつくるようにまぶして小判型に成型します。次に全卵を溶いた卵液にくぐらせて細かめに挽いたパン粉をまぶします。衣に使うパン粉は角食パンの白い部分のみを挽いたものを使用します。パンは仕入れてから2〜3日置き、ほどよく水分を飛ばしてから粉にすることで揚げたときにカリッとした食感に仕上がります。
技のポイント3 

 
 

やや低めの油温で衣を焦がすことなく、芯まで熱を入れていきます

揚げ油にはラードを使用し、160℃とやや低めの油温で6分ほどかけてゆっくり揚げていきます。1個あたりのサイズが大きいため、タネの芯まで熱が入ったときに、衣がきれいなキツネ色に仕上がるための温度と時間のバランスが重要です。油に投入してから1分後にひっくり返して表面をまんべんなく固め、加熱中に肉汁が流れ出ないようにします。ラードは油切れがよく、揚げ物を軽い食感に仕上げてくれます。
技のポイント4 



美しく澄んだ赤銅色のデミグラスソースは継ぎ足しながら伝統を守り続けています

二代目がレストランとして本格的な洋食を提供しはじめて以来継ぎ足しながら店の味を守り続けているデミグラスソースです。 

 

牛スジ肉、鶏ガラ各5kgとニンジン、セロリ、タマネギ計2kgをそれぞれローストしてから鍋に入れて4日間弱火で炊き続けます。一度漉したあとに牛バラ肉、牛テール、牛タンのブロックと香味野菜を加えてさらに4〜5時間煮込みます。ここで煮込んだ肉はビーフシチュー用に使うため取り出し、さらに漉します。


 
その後、ケチャップ、エダムチーズ、ウスターソース、赤ワイン、香辛料を加えて調味し、デミグラスソースには珍しく自家製のホワイトルウを入れて粘度を高めて仕上げます。
オススメメニュー1

オニオングラタンスープ 1,500円(税込)

根強いファンを多く持つ、創業当時からの人気メニューです。タマネギの濃厚な甘みとフレッシュな酸味を感じる味わいが印象的です。20kg超の玉ネギを焦がさないように注意しながら鍋で炒め、牛スジ、牛スネ肉、丸鶏、鶏ガラ、香味野菜などを水から約5時間煮出ししたコンソメスープと合わせます。キャセロールの中央には食パンをセルクルでくり抜いたものにエダムチーズをふって香ばしくトーストしたものを浮かべています。仕上げにエダムチーズと少量のホワイトチェダーを加えてあり、スプーンですくったときにチーズがのびるシズル感を演出します。
オススメメニュー2
海老マカロニグラタン 2,200円(税込)
大ぶりにカットされた色鮮やかなエビがゴロゴロと入ったビジュアルがごちそう感を高めている一品です。エビはキロ14-15尾サイズのブラックタイガーをチョイス。加熱すると身色が濃い赤に色づくことが採用の理由です。その他の材料は、タマネギ、ピーマン、マッシュルームを刻んだものを鍋で焦げないように注意しながらバターで炒めていきます。しんなりしたところで茹であげたマカロニを加えてエダムチーズ、塩、コショウ、ガーリックパウダー、セロリパウダーで調味します。器に具材を盛り、ベシャメルソースをかけ、エビを表面から見えるようにのせます。パン粉、エダムチーズをふって澄ましバターをまわしかけたら210℃のオーブンで3〜4分熱して焼き色をつけて仕上げます。ベシャメルの作り方は牛乳とブイヨンを1対1の割合で合わせ、自家製のホワイトルウを加えます。40分程度加熱しながら練って粘度を上げたら、漉してできあがりです。
オススメメニュー3
スペシャル洋食弁当 A弁当 3,500円(税込)
香味屋が店を構える周辺では商売を営む家が多く、創業当時から出前の需要がありました。またお寺が多く、出前や法要の要望に応えるために洋食弁当を用意しています。「おいしいものが少しずつ食べられる」こともあり、今では法要以外でも人気のメニューになっています。内容はコールドビーフ、車エビのポシェ、スタッフドエッグ、ホタテのテリーヌ、ロータリアン、一口カツ、チキン唐揚げ、牛タンコロッケ、ポテトサラダ、エスカベッシュとバラエティ豊か。人気メニューになることも頷ける充実ぶりです。
  • お店紹介

    写真中央が料理長の小田倉光夫さん。「伝統をつなげて店の味を守り続けているからこそ、お客さまに愛され続けているのだと思います」と語る

     香味屋の創業は大正14年(1925年)。最初はコーヒー豆や香水などの舶来品を扱う雑貨店だったそうです。当時の根岸は花柳界として賑わいをみせていた場所で、芸者衆に愛されていました。
    洋食店として舵を切ったのは終戦後。船上料理長として腕を振るっていた二代目が香味屋を本格レストランとして再興しました。香味屋の代表的メニューのひとつビーフシチューは、大ぶりの塊肉をじっくり煮込んだスタイルで二代目料理長が中華のトンポーロウや日本の豚の角煮から着想したオリジナルです。
    商売人の多い下町では、一家総出で店を切り盛りしていたことから食事の支度をする暇もなく、遅い時間の昼食や出前の需要が高かったそうです。午後に休憩をとらず、どの時間帯でもすべてのメニューに対応するスタイルや、お弁当メニューが充実しているのも、地域のお客さまの暮らしに寄り添っていた「下町の洋食屋さん」ならではといえます。
    現在、厨房スタッフを率いる小田倉光夫料理長は五代目。40年にわたって香味屋ひとすじの生え抜きで、新宿や日比谷に支店を出していたころは支店長として厨房を取り仕切り、本店の味の再現に尽力してきました。本店の料理長となった今も伝統の味を守り続けています。
    三世代、四世代で愛顧する顧客も多いのも、手間暇を惜しまずに丁寧に作られた伝統の味を今に受け継いでいるからでしょう。またSNSブームをきっかけに歴史ある老舗レストランが若者の注目を集めており、近年は20代〜30代カップルの利用も増えているのだそうです。近年では一般客を対象にした料理教室をスタート。毎回定員オーバーの人気ぶりを見せています。
  • 基本情報

    店名 レストラン香味屋
    住所 東京都台東区根岸3-18-18
    電話 03-3873-2116
    営業時間
    11:30~22:00(L.O.20:30))
    定休日

    水曜日(祝日の場合は翌日)、12月31日、1月1・2日

    席数

    88席

    主な客層 近隣の方、目的客、お祝いごとやパーティー等
    予算の目安(夜) 3,000円~5,000円
    開業 1925年10月20日
    HP http://www.kami-ya.co.jp/
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。
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