【洋菓子】Ma Prière(マ・プリエール)

東京都/武蔵野市

いつの時代も人気が高いチョコレートケーキ。ガトーショコラやオペラ、ブラウニーなど種類もさまざまですが、今回はフランス語で「黒い森」を意味するフォレ・ノワールにスポットを当てます。フォレ・ノワールは、キルシュ酒漬けのチェリーを散らしたクレーム・シャンティーをチョコレート風味の生地でサンドし、刻みチョコレートをふりかけたケーキ。100種類以上のクーベルチュール・ショコラを操る“チョコレートの魔術師”猿舘英明さんが手がける「フォレ・ノワール」は、独自のアレンジでよりチョコレートの奥深さを感じさせる大人な味わいに仕上がっています。
 
クローズアップメニュー


フォレ・ノワール 520円(税抜)
ビスキュイ・ショコラで、グリオット・チェリーのキルシュ酒漬けを敷き詰めたムース・キルシュをサンドし、その上にムース・ショコラ、チェリー・コンフィ、ダクワーズ・ショコラを重ね、クレーム・シャンティーやココアパウダー、チョコレートでデコレーション。サクふわなダクワーズと軽やかでしっとりしたビスキュイが、ムース・ショコラのカカオ感を際立たせています。ムース・ショコラのビターで濃厚な風味に満たされると同時に、湧き上がるように甘く華やかなキルシュ酒の香りが広がっていきます。グリオット・チェリーの甘酸っぱさが弾け、チョコレートとチェリーの調和のとれた味わいに五感が刺激される一品です。
技のポイント1

チョコレートを扱う上で重要なのは温度と安定した結晶化

土台となるビスキュイ・ショコラ作りからスタート。全卵、転化糖、グラニュー糖を40℃まで温めて泡立て、リュバン(リボン)状になったら湯を加えて混ぜます。湯を入れるのは、水分量を上げることで軽い食感に仕上げるため。混ぜる速度を低速にして泡立ちのキメを整えたら、2回ふるっておいた薄力粉と重曹、ココアパウダーを混ぜ合わせ、天板に伸ばして210℃のコンベクションオーブンで約6分焼き上げ、冷ましておきます。これを2枚用意。通常はベーキングパウダーを使いますが、生地にココアが入ると縮みやすくなるため、それを防ぐために重曹を使うそうです。
 
 
ビスキュイ・ショコラの底面に、溶かしたチョコレートを塗ります。ここで最も重要なのが、溶かす際のチョコレートの温度。ビターのクーベルチュール・ショコラを電子レンジを使い、35℃以下でチョコレートの結晶を壊さないように溶かします。50℃を超えてしまうと焦げてしまうので細心の注意が必要です。仕上がりのベストは32.5℃です。チョコレートにつやがあるのが、結晶が安定している証拠。溶かしたチョコレートをビスキュイ・ショコラの片面に塗り、冷蔵庫で3分程冷やします。この工程はパリパリした食感のアクセントになるだけでなく、滑り止めにもなり、生地にアンビベした(染み込ませた)シロップの染み出しを防ぐ効果があります。

 
ビスキュイ・ショコラのチョコレートの面を下にしてカードルをはめ、はみ出した部分をカット。グリオット・チェリーやグリオット・チェリーのピューレなどで仕立てたシロップとキルシュ酒を混ぜ合わせたアンビバージュ(染み込ませる液体)を、ビスキュイ・ショコラの上面にアンビベしてなじませておきます。ちなみに使用されるキルシュ酒は、いわく「かわいらしいサクランボの味がする」もので、日本で作られたキルシュ酒です。
技のポイント2
 

ムース作りは温度と混ぜ方次第で仕上がりに大きな差が出ます

続いてムース・キルシュ作り。アーモンドミルクを電子レンジで沸騰するまで温め、板ゼラチンを加えて泡立て機で溶かします。フロスト・シュガーを混ぜて泡立てた生クリームを加えていきますが、その前に生クリームが6分立ての固さになっているかを確認。生クリーム3分の1と「かわいらしいサクランボの味がする」キルシュ酒を加えて、36℃に温度を下げます。さらに残っている生クリームの半分を混ぜ合わせ、それを残りの生クリームへ加えて混ぜます。比重が違うと混ざりにくくなるので、生クリームは回数を分けて入れるのがコツ。猿舘さんによれば「同じ配合でも温度と混ぜ方次第で口当たりが変わる」とのこと。混ぜる際に温度差があると油脂が分離してしまいますし、混ざりすぎると脂っぽい口当たりになるのだそうです。
 
ビスキュイ・ショコラの上に、ムース・キルシュの半分を流し込みます。その際、カードを使って同じ方向へ流していくと平らになりやすいとのこと。まんべんなくならしたら、キルシュ酒漬けのグリオット・チェリーをムースに埋めるように押しながら散らします。残りのムース・キルシュも流し込んだら、ビスキュイ・ショコラを重ね、前述のアンビバージュでアンビベします。
 
技のポイント3


 

泡立てた生クリームの投入前に冷たい生クリームで温度を下げるのが不可欠

ムース・ショコラに使うクレーム・パティシエールを作ります。グラニュー糖を加えた卵黄を、混ぜ合わせておきます。牛乳にもグラニュー糖を入れて火にかけ、バターを入れて温めます。時々かき混ぜて、状態をチェック。沸騰したら、攪拌しておいた卵黄に加えます。鍋に戻して最初は強めの火で混ぜ、そのうち全体がつながる瞬間があるので、その瞬間に火から外すか、火を弱めます。完全につながったら、伸びてくるまで強火くらいで手早くかき混ぜて、火から下ろします。伸びてくるまで火にかけますが、やりすぎるとまたしまってしまうので、その前に火から下ろすのがポイント。裏ごしたら、クレーム・パティシエールの出来上がり。


  
カカオ分70%のクーベルチュール・ショコラを、電子レンジで50℃に溶かします。それをクレーム・パティシエールに加え、フードプロセッサーで攪拌。クレーム・パティシエールが冷たい場合は、少し温めて使います。泡立てた生クリームを混ぜてムースを仕上げていくのですが、作り立てのクレーム・パティシエールと溶かしたクーベルチュール・ショコラは高温状態。混ぜると油脂分離が起きてしまうので、フードプロセッサーに冷たい生クリームを注いで、攪拌しながら温度を下げます。必要な水分量を見ながら冷たい生クリームを投入することで、全体がつながり、滑らかでつやのある出来になります。


  
クーベルチュール・ショコラとクレーム・パティシエールに冷たい生クリームを混ぜたものをボウルに空け、6分立ての生クリームを2回に分けて加えます。泡立てた生クリームを混ぜた仕上がりの温度が、22~25℃になるのが理想的。一番空気量が安定した仕上がりになります。


  
カードルの生地の上に、ムース・ショコラを流し込み、カードで全体をならします。生地を冷やしすぎると、ムース・ショコラがのせにくくなるので、長時間入れる時は冷蔵庫へ入れておくことをおすすめします。


  
卵白、グラニュー糖、乾燥卵白でメレンゲを作り、2回ふるったアマンド・プードル、粉糖、薄力粉、ココアパウダーを混ぜ合わせる。天板に丸口金で生地を絞り出し、純粉糖をふって180℃のコンベクションオーブンで約13分焼成。こうして出来たダクワーズ・ショコラの平らな面に、チェリー・コンフィを塗ります。塗った面を下にしてムース・ショコラに重ね、冷やし固めます。7~8℃に冷やしておいたクレーム・シャンティーをダクワーズ・ショコラの上に絞り、デコール用粉糖をふりかけ、さらにココアパウダーをふりかけて、チョコレートを飾れば完成。先にデコール用粉糖をふりかけると、ココアパウダーが湿気にくいそうです。
オススメメニュー1

タンドレス 520円(税抜)

ビスキュイ・ノワゼットの土台に、プラリネクリーム、蜂蜜のクレムーを乗せ、周りをベルガモットのショコラ・ムースで覆い、鮮やかな黄色で色付けされたグラサージュで仕上げています。プラリネクリームのヘーゼルナッツの香ばしさとチョコレートのビター感が、濃厚でぜいたくな味わい。ベルガモットの爽やかな酸味とチョコレートのコクの相性がよく、蜂蜜の甘味も上品で、後味がすっきりしています。それぞれ素材の違うムースやクリームなのに、別々とは思えないほど口当たりと口どけが違和感なく交わり、一体感を生んでいます。
オススメメニュー2
ジュレ ド カカオ 1個250円(税抜)
カカオの果肉、カカオパルプとエクアドルのプレミアムチョコレート「パカリ」のチョコレートをブレンドしたパート・ド・フリュイのショコラ版。カカオパルプのすっきりとした甘酸っぱさが爽やかで、噛むほどにカカオの重厚感のあるコクが感じられます。写真手前はローカカオマス、その奥がローカカオバター、さらに奥左がローズ、同右がレモングラス。天然ローズの高貴な香りやレモングラスの酸味など、それぞれの特徴を生かした味わいが楽しめます。ギフトボックスも4個入り1,250円(税抜)からあります。
オススメメニュー3
マプリショコラ 5個入り1,620円(税込)
グルテンフリーで、吸収の穏やかな糖パラチノースを使用したスローカロリーの焼き菓子。蒸し焼きにしているのでしっとりとしていて、味わうほどにチョコレートの濃厚さが広がっていきます。使われているチョコレートはカカオ70%で、それぞれ猿舘さんが厳選した産地別になっていて、写真左からエクアドル産、パプアニューギニア産、ベネズエラ産、ドミニカ産、西アフリカサントメ島の5種類です。セット販売のみで、シンプルながら洗練されたボックスに詰め合わされているので、おもたせにも喜ばれます。
  • お店紹介
    「ボンボンショコラはすでに120種程ありますが、今後さらに力を入れていきたいアイテム。10数種は増やす予定です」と、ショコラティエとしてますます活躍が期待されるオーナーシェフの猿舘英明氏
     ケーキや焼き菓子、ボンボンショコラなど、チョコレートを駆使したスイーツが特徴的なパティスリー&ショコラトリー。ショコラティエでオーナーシェフの猿舘英明さんは、100種以上のクーベルチュール・ショコラの知識を携え、厳選した20社以上のクーベルチュール・ショコラを使い分ける、さながら“チョコレートの魔術師”。その実力は、2003年「ガストロノミックアルパジョンコンクール」で準優勝、2004年に「ガストロノミックディジョンコンクール」チョコレート部門(味審査)1位、2014年にはフランスのチョコレートガイドブック「C.C.C.」の「セレクションジャポン」で5タブレット(5ツ星)を獲得し、最高評価を受けた受賞歴からもうかがえます。
    岩手県の和洋菓子店で生まれ育った猿舘さんは洋菓子の世界へ進み、「辻調理師学校」フランス校を卒業。「ル・サントノーレ」が展開する世田谷区の「アルパジョン」「ヴォアラ」で5年半勤務し、新宿区の「ラ・ヴィ・ドゥース」のオープニングスタッフとして入社して、スーシェフを務めました。それからフランスへ渡り、ノルマンディ地方の「ドゥヌー」や「ルオー」、パリ郊外の「ラトリエ・ドゥ・ショコラティエ」、パリ最古のパティスリー「ストレー」やグループ・アラン・デュカス「be」で腕を磨き、一番多くのことを学んだというパリ「ミッシェル・ショーダン」へ。完璧主義者のショーダン氏から、これまでの経験を覆されるほど、ショコラ作りから立ち居振る舞いまで徹底的に仕込まれたそうです。数々の経験を活かし、満を持して「マ・プリエール」を開業すると、またたく間に人気店に。カカオのエキスパートであるチョコレートメーカーやカカオハンターから、コラボレーションしたいとラブコールを受けるほど、業界でも高い評価を得ています。
    ケーキは常時25~30種類程あり、11時には店頭に並びますが、それらも昼を過ぎると売り切れ続出。焼き菓子の回転率も高く、ほぼ毎日焼いています。そして、何と言っても目を引くのが、ボンボンショコラの種類の豊富さ。岩手県産のヤマナシやハシバミ、岩手の銘酒「南部美人」など出身地の素材を起用したものや、産地別のカカオを使ったものなど、約120種類を数えます。いつ訪れても、新しい出合いやワクワク感を与えてくれる店です。
  • 基本情報


    店名 Ma Prière(マ・プリエール)
    住所 東京都武蔵野市西久保2-1-11 バニオンフィールドビル1F
    電話 0422-55-0505
    営業時間 10:00~19:00
    定休日

    不定休

    席数

    4席

    主な客層 ファミリーやビジネスマン、学生、年配など年齢層も幅広く、男女の比率もほぼ同じ
    予算の目安 テイクアウトは2,200~2,500円、イートインは1,000円前後
    開業 2006年8月1日
    HP https://www.ma-priere.com/
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。
  •