【ハンバーガー】Fooler Fooler

(東京都/品川区)

グルメサイト「食べログ」で4年連続ピザ百名店に選出される実力派ピッツェリア「Pizzeria Bakka M'unica」が2021年7月にオープンした新業態。昼はハンバーガー&ハンバーグ専門店、夜はワインとクラフトビールを主力にしたバルという二毛作スタイルですが、ユニークなのはイタリア食材をふんだんに使った新しいスタイルのハンバーガー「ボンバーガー」です。20年のコロナ禍をきっかけに外食各社がこぞってハンバーガー専門店で参入している中、ピッツェリアの経験を活かした独創性でグルメバーガー・シーンに新風を吹き込んでいます。

 
クローズアップメニュー


ボンバーガー全部のせ 1,183円(テイクアウト1,229円)(税込)
 ナポリで「ボンバ」(イタリア語で“爆弾”)と呼ばれるナポリピッツァの生地を使った窯焼きパンをバンズにした新食感のハンバーガーで、注文を受けてから焼く、できたての香ばしさも付加価値を高めています。「開発にあたりいくつものグルメバーガー専門店を視察したが、バンズを自家製にしている店はすごく少ない。そこでナポリピッツァの生地を生かしたバンズをアピールすればオリジナリティを打ち出せると考えました」とオーナーの硲 由考さん。とはいえ、ナポリピッツァ用に配合された小麦粉でのバンズ開発は思いのほか難航。「当初はPizzeria Bakka M'unicaで提供していた窯焼きハンバーグをパティ仕様にし、ピッツァ生地を素焼き(ボンバ)にしてハンバーガーにしたらいけるだろうと考えていたのですが、試食してみたら驚くほど合わなかった(苦笑)」。結局バンズ専用の生地を開発することに。結果、ナポリピッツァの香ばしい風味を保ちつつ、サックリと軽くかぶりつきやすいバンズが完成し、バランスのとれた食感になりました。
その他の具材もイタリア料理らしさを意識した味つけを志向。レタスの代わりにルッコラセルバチカを使用し、ハンバーグソースは自家製バルサミコソースと自家製のタルタル、チーズにはリダーチーズを隠し味的に入れています。パティの肉々しい旨味だけが主役となりがちなハンバーガーですが、Fooler Foolerのボンバーガーは試行錯誤の末にたどり着いた、苦味や酸味を含めた五味のバランスが絶妙な上品さに個性が光っています。
 
技のポイント1
 

バンズは計36時間かけて熟成させ、注文を受けてから焼成します

ナポリピッツァ用に使う4種の強力粉をベースに薄力粉、バター、塩を加えて生地を練ります。一次発酵に24時間、二次発酵に12時間と長時間熟成させて甘みと旨みを引きだしています。熟成は年間通して室温で行なっているため、気温の変化に応じて熟成のタイミングを調整しています。注文を受けてから405℃のピザ窯で1分間焼き、窯内の網の上に移動させて余熱で熱を通します。これにより外側はほどよく香ばしく焼けて、中はふんわりしたバンズに仕上がります。焼きあがったらキッチンバサミで半分に割って具材をはさみます。
 
技のポイント2

  
 

手切りでミンチした極荒挽きパティで肉の旨みをストレートに表現

パティは旨みとジューシーさがありピッツァ生地のバンズとの相性が良く、ハンバーガーらしいカジュアルプライスを実現することを狙って米国産または豪州産の牛の肩肉を使用。手作業で5〜10mmサイズにカットしていきますが、ほどよく不揃いに切ることで肉の具材感を出すこともポイントです。調味には塩、ブラックペッパーに白味噌を少量加えて甘みとコクを足しています。
パティのサイズは120gとボリューミー。180℃のグリルで両面を3分間ずつ焼きます。裏返したらレッドチェダーチーズとノルウェー産リダーチーズをのせ、バーナーで香ばしく焦げ目をつけます。「パティの旨みが濃すぎてレッドチェダーチーズだけだと負けてしまう。コクのあるリダーチーズを足すことでチーズの存在感を出せるようになりました」と硲さん。仕上げにバルサミコ酢ベースの自家製ソースをかけてフィックスです。


技のポイント3

  



ルッコラセルバチカと自家製のバルサミコソースでイタリア料理のテイストを強調します

中にはレタスの代わりにイタリア原産のルッコラセルバチカが入っており、ゴマの香りと少しの辛み、苦みがありジューシーなパティ、コクのあるチーズと相性が抜群。レタスと違い、水っぽくならずに食べ応えのある味ながらも最後まで食べられるすっきりとしたまとまりのある美味しさになります。バルサミコソースは煮詰めたバルサミコ酢に醤油、ウスターソースを加えてコクをプラス、タルタルソースはマヨネーズとスイートレリッシュを合わせて仕上げています。ハンバーガーとしてのスタイルが斬新なだけにソースまで個性を出しすぎると客層の間口が狭まりかねません。ソースはあくまでも脇役と割切ってシンプルな味にしつつ、自家製にすることで使用食材に合わせたバランス調整がしやすいところが優位性になっています。
 
オススメメニュー1
 
寿命10分ドーナツ 310円
ユニークなネーミングのとおり、できたてだからこそ味わえるモチモチ食感がたまらないドーナツです。油温が高いと生地が硬くなりやすいため175℃に設定し、揚げ時間は2分半。フィリングはシチリア産のレモンを加えた爽やかな酸味のカスタードクリーム。揚げたてを提供するため、調理人が火傷上等の覚悟でアツアツの揚げパンを持ってフィリングを注入していく心意気にも感動します。頬張るとできたてのカリッとした表面、柔らかい生地からレモン風味のカスタードクリームが口いっぱいに出てきて幸福感のある味に仕上がっています。
 
オススメメニュー2
ピカンテイタリア 1,117円
10月から提供開始した新作ハンバーガー。ピカンテとはイタリア語で「辛い」という意味で、姉妹店「Pizzeria  Bakka M'unica」のトマトソースをベースにしたオリジナルのハラペーニョソースのパンチが効いた一品です。具材は下からルッコラセルバチカ、トマト、パティ、ハラペーニョソース、ブッラータチーズの中のクリーム部分だけを用いたストラッチャテッラ、パクチー。最初の一口めこそ爽やかな辛さを感じますが、その後はソースの上にのせたストラッチャテッラの超ミルキーな甘みが加わってリッチでマイルドな味わいに変化。「ハンバーガー=ワイルド」という先入観を見事に覆してくれます。
オススメメニュー3
ちぎりポテトフライ S385円、M440円(写真はMサイズ)
不揃いな形ながら外側はカリカリ、中はホクホクとした食感でジャガイモの甘みも強く、従来のポテトフライのイメージを変えるほどのインパクトです。ジャガイモはやわらかくなるまで茹でて一口大の大きさに手でちぎり、175℃の油でカリッ揚げて塩を振ります。ジャガイモの品種は時季によって変わりますが、必ず少しだけ一年熟成の「インカのめざめ」を混ぜるのがポイント。ねっとりとした食感で糖度の高い品種が混ざることで味わいの幅が広がって強い印象を残します。
  • お店紹介

    左がオーナーの硲由考(はざま・ゆたか)さん、右が商品開発を担当したシェフの谷山将伍さん。「ハンバーガーの既成概念にとらわれずに、ピッツェリアだからできるハンバーガーをめざしました」と語る。

    オーナーの硲さんは、転職サイト運営企業を退職後2012年にフードトラックによるナポリピッツァ移動販売店「Pizza Bakka」をオープン。なんと飲食店勤務経験は学生時代のアルバイトのみ、ナポリピッツァの技術は名古屋の名店チェザリでの数日の研修とYouTube、食べ歩きなどを行なって独学で習得したそうです。「トマトソースの作り方すら知らないのにピザ屋で独立を宣言していました」と硲さんは笑いながら当時を振り返ります。
    渋谷の路地裏に定期出店するかたわら、屋外フェスや花見などに移動出店して順調に業績をのばし、2016年に東京・鮫洲に店舗「Pizzeria Bakka M'unica」をオープン。ナポリピッツァの他にトリッパのトマト煮など食事メニューを充実させ、翌17年以降4年連続でグルメサイト「食べログ」のピザ百名店に選出されるほどの実力店に成長しています。店舗営業と並行してフードトラックによる移動販売は継続しており、コロナ禍で店舗営業が厳しい状況でもお客様の自宅まで訪問してできたてを提供する「おうちでピッツェリア」を実施。またデリバリーや冷凍ピッツァのオンライン販売に着手するなど持ち前の行動力でウィズコロナ時代の飲食店づくりを推進しています。
    21年7月に「Fooler Fooler」をオープンさせたのもそうした取り組みの一環で、緊急事態宣言時のような危機的状況でもテイクアウトやデリバリーに強い業態をめざして開発されました。その一方で「社員がやりたいことを実現できる店も作りたい」とも語り、同店が夜をワインとクラフトビールのバルにしたのもソムリエの社員の活躍の場にしたいという考えから。ゆくゆくはクラフトビール好きな社員のために醸造設備を導入して自家製クラフトビールの製造販売をめざす計画です。
     

  • 基本情報


    店名 Fooler Fooler
    住所 東京都品川区東大井1-20-3
    Qハウス1階
    電話 03-6873-4702
    営業時間 11:30〜17:00、17:00〜22:00(21:30L.O.)
    定休日

    月・火曜日定休

    席数

    13席

    主な客層 地元住民
    予算の目安 ランチ1300円、
    ディナー3,000円
    開業 2021年7月17日
    SNS https://www.instagram.com
    /foolerfooler/
     
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。
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