【中華】胡同 三㐂

東京都/世田谷区

東京・世田谷の住宅街、祖師ヶ谷大蔵の駅近くにお店を構える「胡同 三㐂」。2019年5月にオープンして早々に話題を呼び、「ミシュランガイド東京」で2021、2022と二年連続でビブグルマンに選ばれている注目店です。焼き餃子や肉団子といったオーソドックスなメニューも伝統的な中国料理の技法や現代的な感性を感じさせる逸品に仕上げる、大城昌宏シェフの技術が高く評価されています。今回は料理人だった祖父の味を再現したという名物メニュー「おじいちゃんの肉団子」の味の秘密についてお話を伺いました。
 
クローズアップメニュー


おじいちゃんの肉団子 1,730円(税抜)

ソフトボールほどの大きさの肉団子はインパクト絶大ですが、箸を入れれば「どうして崩れないの?」と不思議に思うほどソフトな食感に驚かされます。重量にして260gもの大きさにしたのはSNSでの話題作りが集客に欠かせないことを意識したそうです。シェフの狙いどおり、初来店のお客様のほとんどが同品を注文する人気ぶり。
「甘めの醤油あんをかけて仕上げているのは現役時代の祖父が作っていた獅子頭(シーズートウ)から、水抜きした木綿豆腐を加えてフワフワとした食感に仕上げるのは祖母が子ども時代によく作ってくれた肉団子の思い出から、二人のエッセンスを組み合わせて作りました」と大城シェフは説明します。その味は余計なスパイスを一切使わないシンプルな美味しさ。肉のうま味を損なうことなく、ほとんど咀嚼せずに食べられてしまう柔らかさと優しい味わいが、ワイルドな見た目とのギャップを際立たせています。
 
技のポイント1

 
 

超粗挽きの豚バラ肉の粒をつぶさないようにタネ生地を練ります

材料を練り合わせてタネ生地を作ります。調味料は左上から卵、薄力粉、おろしショウガ、コショウ、紹興酒、胡麻油、塩、うま味調味料、グラニュー糖。7〜8mmメッシュの超粗挽きにひいた豚バラ肉3kgに卵と薄力粉を除くすべての調味料を加えて練りこみます。肉の粒を潰さないよう、よく冷えている状態からざっくりと練っていくのがポイント。粘りが出てきたところで水抜きをした木綿豆腐2丁を合わせ、卵、薄力粉を加えて結着力が出てきたところで1個260g前後に分け、空気を抜きながらボール状にまとめていきます。
 
技のポイント2


 

高温の油で表面を揚げ固めてうまみを閉じ込めます

タネ生地を油で揚げて表面を揚げ固めます。水溶き片栗粉でタネの表面をコーティングし、油煙が立ちのぼるほど高温にした白絞油に入れていきます。油温を高くすることにより短時間で表面を揚げ固めて、肉のうま味を閉じ込めます。表面がうすキツネ色になったら火力を下げ、芯までじっくり熱を入れていきます。5分ほど加熱したら再び強火で油温を高めて表面を再度揚げ固めることで、煮込みの段階で崩れることのない肉団子になります。揚げ終えたタネは湯通しして余計な油分を落とします。
技のポイント3

 
 
 
 

煮込みと熟成の二段階に分けて味を染み込ませます

圧力鍋で煮込み、味を染み込ませます。材料は左上から長ネギの青い部分、ショウガ、中国醤油、濃口醤油、紹興酒、うま味調味料、上白糖ですが、煮込みの段階では濃口醤油、うま味調味料、上白糖は使いません。沸騰した湯にネギ、ショウガ、紹興酒、中国醤油を加えたところにタネ生地を入れていきます。すべて入れたらフタをして中火で50分間煮込みます。煮込み終えたらタネ生地を取り出して保存容器に移し、残った煮汁に濃口醤油、うま味調味料、上白糖を加えて火にかけてタレを作ります。材料が溶け合ったらタネ生地を入れた保存容器にタレを漉し入れて冷蔵庫でひと晩寝かせます。二段階に分けて味を入れることで、味がボヤけるのを防ぐとともに、冷やす段階のほうが味が芯までしっかり染み込ませることができます。
 
オススメメニュー1

口水鶏(よだれ鶏) 1830円(税抜)

修業先だった東京・広尾の「中華春彩JASMINE」の名物料理のレシピを受け継ぐ一品です。黒酢の酸味とコクをきかせた甘酢ダレに、13種ものスパイスを配合した自家製の辣油を合わせることで複雑で爽やかな風味に仕上がっています。骨付きの鶏モモ肉を使用して、しっとりとした食感やコクの強い味わいがクセになります。
 
オススメメニュー2
大城家の焼き餃子 5個 700円(税抜)
父の康雄さんが自宅で作っていた家庭の味を再現した一品です。主な材料は豚挽肉とキャベツだけというシンプルさながら、何個でも食べられそうなほど飽きのこない味わいに仕上がっています。しっかり塩もみして水気を取り除いたキャベツと豚挽肉の割合は2対1で野菜の甘みと肉のうま味が凝縮。厚めの皮に50gものあんを包んでいて食べ応えは満点で、焼き面は揚げ焼きに近い状態でバリッ、モチッとした食感に仕上がっています。
 
オススメメニュー3
天使海老のフライドガーリック炒め 2,380円(税抜)
たっぷりかけられた自家製のシーズニングが香ばしい一品です。天使海老、レンコン、マイタケをいったん油通ししてから、強火でシーズニングを絡めながら炒めて香りとうま味を食材に移していきます。このシーズニングはエシャロットとニンニクをみじん切りして素揚げしたものがベース、炒める時に細かく刻んだ赤ピーマン、トーチ、小ネギも加えています。
 
  • お店紹介

    「何気ない家庭的な料理をプロの技でおいしい料理に昇華させることで、地域の人の生活に欠かせない店にしていきたい」とオーナーシェフの大城昌宏(おおしろ・まさひろ)さん
     
    小田急線「祖師ヶ谷大蔵」駅から徒歩2分のところにある昭和レトロなスナックや小料理屋が集う「まるよし横丁」の一画にお店を構える「胡同 三㐂」。木の温もりを感じさせる落ち着いた内装デザインに加え、トイレに通じる階段の壁には家族の写真や大城シェフのお子様の手形・足形がかわいらしくあしらわれるなど、家庭的な雰囲気を演出しています。
    オーナーシェフの大城昌宏さんは東京農業大学で栄養学を学び、卒業後「グランドハイアット東京」で料理人のキャリアをスタート。次に腕を磨いた東京・広尾の「中華春彩JASMINE」では、セカンドシェフや新店の立ち上げも経験し、29歳の若さで独立の道を選びました。
    実は大城シェフ、「現代の名工」を得る大城康雄氏を父に、「黄綬褒章」を得る大城宏喜氏を祖父に持つ中国料理界のサラブレッド。そんな彼が目指したのは、料理人の父や祖父が休日に振る舞ってくれた「家庭の味」です。
    「自分の家族のルーツを継いでいきたいという想いが、料理人をめざそうと考えたきっかけでした。『おじいちゃんの肉団子』や『大城家の焼き餃子』『パパ炒飯』などは自分が子どもの頃に食卓に並んでいた料理がベースになっています。店を構えた祖師ヶ谷大蔵は地元のファミリー客が主客層となる住宅街ということもあり、そんな家庭的な印象も親近感を抱いていただいているようです」と大城シェフ。
    どれもシンプルなレシピながら、プロならではのていねいな仕込み、火入れにより、ここでしか食べられない味が表現されています。他方、コース料理などでは北京ダックやフカヒレ姿煮込みをはじめとする本格中国料理も提供して、普段づかいもハレの日づかいもできるお店です。
    「ゆくゆくは点心のテイクアウト売店にも挑戦したい。お客様も毎日店に来て食べるわけにはいきませんが、テイクアウトなら毎日の食事の一品を豊かにできるのではと考えています」と語り、地域に愛される店を目指し続けるシェフの姿勢が伝わってきます。

  • 基本情報


    店名 胡同 三㐂
    住所 東京都世田谷区祖師谷1-8-17 まるよし横丁内
    電話 03-6882-5530
    営業時間 12:00〜14:30(14:00L.O.)、
    18:00〜23:00(21:30L.O.)
    定休日

    月・火曜日定休(祝日は営業)

    席数

    28席

    主な客層 地元住民で子連れや年輩客も多い、大学生もちらほら
    予算の目安 ランチ1,500円、ディナー5,000円
    開業 2019年5月17日
    HP https://hutongsanki.com/
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。
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