(東京都/台東区)
大正元年に屋台からスタートした蓬莱屋は、ヒレカツ発祥の名店です。「トンカツといえばロース肉」という時代に、脂身の少ないヒレ肉を採用したところ、その柔らかさと美味しさで評判になりました。 現在もロース肉は使わず、ヒレ肉一筋という、こだわりのヒレカツ専門店です。今では多くの店が採用している「二度揚げ」も、蓬莱屋が最初に始めたオリジナルの調理法。創業以来、100年以上守り続けている、その製法と味の秘密を伺いました。
クローズアップメニュー
ヒレカツ定食 3,500円(税込)
ヒレ肉は一頭の豚から2%ほどしか取れない希少部位で、脂肪分が少なく柔らかな肉質が特徴。店の看板メニューのヒレカツは、創業から引き継がれているレシピを忠実に守り、ヒレ肉の柔らかさと美味しさを生かした上品でジューシーな味わいです。 サクサクとした食感の薄い衣の中から、肉汁と旨味がジワーッと口の中に広がります。胃もたれすることのないさっぱりとした軽さが特徴なので、お子様からお年寄りまで幅広い年齢層に愛されています。
技のポイント1
揚げ油はラードとヘットをブレンド
揚げ油は創業からのレシピどおり、ラード(豚脂)とヘット(牛脂)をブレンドしています。肉屋から届いたときは、ブロックのような大きな塊です。そのままだと溶けにくく焦げやすいため、あらかじめ細かく刻んでおきます。 8キロずつのラードとヘットを鍋に入れて強火にかけ、途中で何度かフタでギューギューと押し付けて絞りながら、1時間ほどかけて溶かします。毎日、営業終了後に翌日分の油を準備するのが日課です。
技のポイント2
脂肪やスジを取り除いて柔らかな食感に
上質のヒレ肉を厳選するために、3社の肉卸し業者と契約をし、その時々で最良の豚肉を仕入れるようにしています。もともと脂が少ないヒレ肉から、さらに脂部分とスジを丁寧に取り除きます。そのため、一本のヒレ肉から一人前(160g)しか取れないことも。残りは一口ヒレカツやメンチカツにして、スジは味噌汁の出汁に使用しています。
ヒレ肉は、火の通りを良くするために切り込みを入れ、塩コショウで下味をつけて、小麦粉、卵液、パン粉をつけます。 パン粉は、4mmの生パン粉を、手ですり合わせてさらに細かくして使用。卵などで固まった部分取り除くため、頻繁にふるいにかけて常にサラサラとした状態を保つようにしています。細かいパン粉は食感が軽いだけでなく、余分な油を吸わないのでサッパリとした味わい。
技のポイント3
二度揚げで外はサクッと、中はジューシーに
揚げ油は高温(約220度)、中温(約180度)の2つの鍋を用意し、二度揚げしています。まず高温の油に1分から2分弱入れ、表面をカリッと固めて、中温の油に移して約10分じっくりと火を通します。油を切って一口大にカットすると、中はうっすらピンク色。肉汁たっぷりで、ジューシーな仕上がりです。
定食は、シャキシャキの細切りキャベツ、ご飯、ヒレ肉のスジと香味野菜で出汁をとったお味噌汁、お新香付き。お好みで、自家製ソース、3種類の塩(フランス岩塩、スリランカ岩塩、藻塩)やカラシでいただきます。 自家製ソースは、数種類のウスターソースをベースにスパイスなどを独自にブレンド。サラサラしていて、酸味のあるサッパリとしたソースです。
オススメメニュー
特製メンチカツ(お土産用) 650円(税込)
お土産でしか食べられない、数量限定の貴重なメンチカツ。ヒレ肉をミンチにしたものと玉ねぎ、つなぎの卵とパン粉、調味料を練り合わせ、細かいパン粉をつけて揚げています。 ヒレカツに使用している上質なヒレ肉を使用し、ヒレカツ同様に二度揚げしているので、衣はサクサクとして中身はふわふわと柔らかく上品な味わいです。キャベツ、自家製ソース付き。ヒレカツ、一口ヒレカツの仕込み次第で数量が変わるため、売り切れてしまう場合も。
お店紹介
「材料の選び方も調理のコツも、先々代の教えを忠実に守っているだけです」と料理長の張 権さん(右)と山岡良有さん。
老舗ヒレカツ店の蓬莱屋が、上野松坂屋脇の屋台から現在の場所に店を構えたのが1928年(昭和3年)。昭和にタイムスリップしたような現在の店舗は1950年(昭和25年)に建てられたものです。1階に9席のカウンターと、2階にはふた間の座敷席があります。
映画監督の小津安二郎氏が愛した店としても知られ、映画の中には蓬莱屋を思わせるセリフやシーンがたびたび登場します。遺作となった『秋刀魚の味』では、撮影所に蓬莱屋2階の座敷を細部まで忠実に模したセットを作り、主人公達がヒレカツを食べているシーンが撮影されています。小津映画のファンも多く訪れ、舞台のモデルとなった座敷の写真を撮っているとのこと。
美味しさのコツは100年以上続く調理法を守ること。先々代は天才肌タイプであれこれ教える人ではなく、調理人達は仕事ぶりを見て学んでいました。その後を引き継いだ先代は調理法を「見える化」することに尽力。時間や温度などを数値化し、唯一無二の味を引き継いでいくことができました。伝統を守り続け、現在は4代目が経営しています。 4代目になってから、小津安二郎監督の映画名がついたセットメニュー「東京物語御前」2,900円(税込)を追加。一口ヒレカツ2個と一口メンチカツ、串カツ2本、ご飯、キャベツ、お新香、シャーベットがセットになった、平日ランチタイムのみ提供するお得なメニューで、女性を中心に人気を集めています。
基本情報
店名 | 蓬莱屋 |
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所在地 | 東京都台東区上野3-28-5 |
電話番号 | 03-3831-5783 |
営業時間 | 平日 11:30~14:30 、 土日祝 11:30~14:30、 17:00~20:30 |
定休日 | 水曜日(祝日の場合は営業、 翌木曜日代休) |
席数 | 30席 |
主な客層 | 近隣の住民と会社員、 おひとり様 |
予算の目安 | 3,000~4,000円 |
開業年月日 | 大正元年(1912)年 |
HP | http://www.ueno-horaiya.com/ |
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