【イタリアン】トラットリア・ロアジ

(東京都/世田谷区)

東京・等々力の閑静なエリアに店を構えて20年以上地元住民に愛され続けているイタリア料理店「トラットリア・ロアジ」。山形出身で鶴岡ふるさと観光大使でもある佐藤シェフは、山形食材を積極的に活用したイタリア料理を提案し続けています。今回はオープン当時から看板商品であり続けている「名物わたりがにのスパゲッティ」についてお聞きしました。

クローズアップメニュー

名物わたりがにのスパゲッティ 1,500円(税込)

人気タレントのYouTube番組で「ワタリガニ以上にワタリガニ」「このパスタがワタリガニそのもの」とまで絶賛された、濃厚な香りとエキスたっぷりなソースがクセになる一皿です。よく見かける殻ごと豪快に盛り付けるスタイルとは真反対の、ソースをからめただけの素朴なビジュアルは意外でもありますが、文字通り「見た目より中身」。 佐藤シェフがワタリガニに着目したのは洋食に転身する以前の米国大使館公邸で日本料理を担当していた頃。「ワタリガニは食べるところ(身)が少ないんだけど、ダシにするとすごく美味しいことを教わった」と振り返りますが、異なる料理ジャンルから発想を得たことがうま味のエキスをとことん出し切るオリジナリティにつながったのかもしれません。

技のポイント1

ワタリガニを細かく砕いてエキスを抽出しきります

ワタリガニは1回の仕込みで2kg(30杯前後)を使用。ローリエやセロリ、タマネギなどの香味野菜を入れた湯で下茹でして臭みを除きます。粗熱がとれたら殻を外し、身やミソは竹串を使って丁寧に取り出しておきます。 鍋にオリーブオイルをひいてみじん切りしたニンニクを炒め、香りが出てきたところでワタリガニの殻を投入してまんべんなく火が通るまで炒めます。その後、ブランデーを入れてフランベし、火を止めて木べらで細かく砕いていきます。ワタリガニを砕き終えたら、ブイヨンを注ぎ入れて煮込み、火を止めてひと晩寝かせます。

技のポイント2

ワタリガニを漉したスープに身・ミソを合わせて濃縮ペーストをつくります

翌日、みじん切りしたタマネギをオリーブオイルで丁寧に炒めます。そこにワタリガニの殻を漉したスープと取り除いていたワタリガニの身・ミソとトマトソースを加えてペースト状になるまで混ぜ合わせます。これをポットに移して冷蔵庫で保存します。

技のポイント3

濃縮ペーストに生クリームを加えてまろやかに仕上げます

パスタを茹で始めると同時に、フライパンでソースを作ります。みじん切りしたニンニクをオリーブオイルで炒め香りが立ってきたら、魚介ベースのブイヨンを1レードル分と、濃縮ペーストを入れて溶いていきます。そこに茹であがったパスタを入れてソースをからませ、仕上げに生クリームを適量加えて全体に合わせたら皿に盛り付けます。

オススメメニュー1

庄内浜産ガザエビのクリームソース和えオレキエッティ 1,500円(税込)

濃厚な甘さが特徴なものの、日本海でしか獲れないうえに水揚げ後数時間で真っ黒に傷んでしまうほどアシが早いため、東京では希少なガザエビ。これを魚介ベースのブイヨンとともに煮詰めてうま味を凝縮させています。ソースとともに食べやすいオレキエッティを合わせることで海のうま味を存分に味わえます。 ガザエビは水揚げ直後にマイナス30℃で急速冷凍されて届いたもので臭みはなし。生クリームとグラナパダーノを加えてミルキーな味わいに。見た目にエビの身はわずかながら、ソースの味、香りはまぎれもなくエビという濃厚さがたまりません。

オススメメニュー2

庄内麸~ピザ 1枚450円(税込)

板状の形状が特徴の庄内麸をピザ生地に活用した個性的なピザです。生地が薄くてパリパリ食感といえばローマ風ピザをイメージしますが、庄内麸はクラッカーに近い軽い歯ごたえでおつまみ感覚で食べられます。 上にはトマトソース、ゴルゴンゾーラ、生ハム、モッツァレッラを層状に盛り付けて290℃のオーブンで90秒焼成。ルッコラは加熱せず、フレッシュなまま仕上げに盛り付けるのがロアジ流です。ゴルゴンゾーラのクセのある風味がワインとの相性を高めています。

オススメメニュー3

庄内麸~カンノーリ 600円(税込)

佐藤シェフが「年に一度は必ず見ます」とまで愛する名作映画「ゴッドファーザー」にも登場するシチリア生まれのデザートです。筒状の生地にはカンノーリ用に特注した庄内麸を使用。生地づくりの手間が省けるうえに、製造の工程で直火焼きする庄内麸ならではの香ばしさや軽い歯ごたえが特徴的です。 庄内麸は使用前にオリーブオイルで素揚げすることでクリスピーな食感に。かつては贅沢品だった砂糖の甘さを強調したフィリングが本場の味ですが、ロアジではリコッタチーズにドライフルーツを加えただけの控えめな甘さに仕上げています。

お店紹介

「息子が料理担当、私はお笑い担当」とユーモアたっぷりなおしゃべりが止まらないオーナーシェフの佐藤幸雄さんと佳祐さん。親子二人三脚でロアジの味を生み出しています

オーナーシェフの佐藤幸雄さんと奥様、ご子息のご家族で店を切り盛りしている「トラットリア・ロアジ」。「子供は国の宝もの、どんどん連れてくるべし!」「ワインは語らぬこと!(ワインは飲むものです)」「ダイエットは明日から!」などのユニークな格言が書かれた「トラットリア ロアジ 御利用の心得10カ条」が店頭に掲げられ、佐藤シェフも手が空けばフロアに出てお客様との会話を楽しむなど、イタリアの食事風景そのものという親しさ、陽気さが同店の魅力です。

佐藤シェフは山形県鶴岡市出身で、鶴岡ふるさと観光大使や「食の至宝 雪国やまがた伝統野菜」のPR大使も務めています。料理に使用する食材も、今回ご紹介した山形産の魚介や庄内麸だけでなく、だだちゃ豆やあつみカブのスープ、同県のブランドいちご「サマーティアラ」を使った贅沢なソースをかけたカルパッチョなど、山形食材を活かした他では味わえないイタリア料理が楽しめるのも人気の理由です。

佐藤シェフは最初日本料理を専らとしていましたが、米国・ニューヨーク国連大使公邸料理人を勤めたあとに洋食に転身。1985年にイタリア・ボローニャの「ダル・ボロニエーゼ」でエミリア・ロマーニャの郷土料理を学びました。帰国後は東京・等々力渓谷のレストラン「ロアジス」の料理長に就任。10年以上繁盛レストランとして賑わっていたものの親会社の経営難で閉店に。しかし地元の常連客に熱望されて、ほど近い現在の場所に「トラットリア・ロアジ」を1999年に開業しました。20年以上経った今も、地元住民を中心に親子二世代で愛され続けています。

今年(2022年)は、コロナ禍でしばらくできなかったクリスマス・ライブディナーやニューイヤーコンサート付きの弦楽四重奏ディナーイベント(2023年)が復活。「お客様に楽しんでもらいたい」という想いがいっぱいに詰まったお店です。

基本情報

店名トラットリア・ロアジ
所在地東京都世田谷区等々力4-8-1 堀之内等々力ビル2階
電話番号03-3703-2662
営業時間11:30〜15:00、17:30〜21:30
定休日月曜日(月曜日が祝日の場合は翌火曜日休み)
席数30席
主な客層地元住民が中心で子連れファミリーや年輩客も多い
予算の目安ランチ1,800円、ディナー4,400円
開業年月日1999年3月
HPhttps://trattoria-loasi.owst.jp/

※掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。