【居酒屋】ジャンソーアタル(雀荘當)

(東京都/足立区)

東京・北千住西口の酒場街の一画に新しくお店を構えた「ジャンソーアタル(雀荘當)」。もとは雀荘だった同店の入口はかつての「麻雀 登美」の看板がそのまま。うっかりすると見逃してしまう隠れ家居酒屋です。そこで提供されるのは、居酒屋料理に中国料理やアジア料理などのテイストを加えたひと工夫あるものばかり。今回お話しを伺った「ニラビーフン」も、「アジア料理では馴染みのあるビーフンを、酒のツマミとして楽しんでもらいたい」という発想から生まれた独創性の高さがポイントです。

クローズアップメニュー

ニラビーフン 825円(税込)

麺に染み込んで翡翠色になったニラペーストと、アーモンドとニラの異なる香ばしさが強い印象を与える具。ダブルのニラ使いで見た目も味もこの店でしか味わえないビーフン料理となっています。ニラはニンニクと同様に独特の香りを放つアリシンという成分がたっぷり含まれる野菜。提供された時に、この食欲をかき立てる香りがテーブルいっぱいに広がるのも人気の理由です。

ビーフンは中国東南部や台湾、東南アジアの各地でそれぞれタイプが異なりますが同店では台湾産のものをチョイス。「細麺のほうがお酒のアテとして食べやすく、また台湾産はコシが強いので鉄板調理でも切れにくい」ことが採用の理由です。

ビーフン・メニューは他に「五目あんかけ」「黒酢卵」「焼豚」といった中国料理風なものを揃えていますが、ニラビーフンだけは独自性を追求。オーナーが繁盛店研究を重ねる中からニラの可能性に着目したのだそうです。ビーフン料理には、自家製のニンニク醤油を添えて提供します。

料理の独自性の高さとはうらはらに、調理工程はいたってシンプル。「本場や本格を追求しすぎると居酒屋料理でなくなってしまいます。あくまでお酒と一緒に食べて楽しいと感じられる料理であることを大切にしています」と金子良太店長は説明します。 調理の様子も居酒屋らしい活気づくりの小道具に。客席から目立つ場所に配置した鉄板でコテを打ち鳴らし、炒める時の音・湯気・香りのライブ感が外食の魅力を伝えています。

技のポイント1

ニラの繊維を残さないようにペーストを作る

仕込みは1回でニラ10束を使用して、できあがる量は15食強程度です。5cm前後にザク切りしたニラを沸騰した湯で軽く茹で、冷水にとります。次に水切りしたニラ、太白胡麻油、酒をブレンダーに入れ、繊維がなくなってペースト状になるまでかけていきます。ビーフンとよく絡まるよう、軽くとろみがつく程度に粘度を調節するのがポイントです。

技のポイント2

ニラを高温で手早く炒めてパンチのきいた香りを出します

具となるニラの炒め物も10束分(約25食分)を作って仕込み置きします。ニラは3cm前後のザク切りにし、胡麻油を煙が出るまで高温に加熱した鍋に加えて一気に炒めます。ニラにしっかりと油が回ったところで火を止め、濃口醤油を加えて和えます。全体がしっとりと馴染んだらいったんボウルに移します。

次に粗く砕いたアーモンドを鍋に入れ、軽く炒りながらたまり醤油をコーティングするように絡めます。最後にニラを戻してアーモンドと和えたら完成です。調味料は醤油のみというシンプルな味つけですが、ニラには濃口醤油、アーモンドにはたまり醤油と異なる旨味の醤油を組み合わせることで深みあるコクを生み出しています。

技のポイント3

鉄板でビーフンを手早く炒めて具と合わせます

ビーフンは仕込みの段階で茹でてニラペーストと和え、1食分ずつ分けて冷蔵保存しておきます。注文を受けたら鉄板に胡麻油をしき、ビーフンを炒めます。塩コショウ、干し桜エビ、オイスターソースと鶏ガラスープを合わせた自家製のダシを加えて炒め合わせたら皿に移し、上にニラの具を盛り付け、カットレモンを添えて完成です。

炒める時間は1分弱と短時間なので、お客さまを待たせずにスピード提供できる調理オペレーションを構築していることも見逃せないポイントです。

オススメメニュー1

スパイスラム焼 935円(税込)

ジンギスカン、ラムチョップといった従来の「羊料理らしさ」をあっさり捨てた商品づくりは「酒場らしい気軽さ」を重視した結果、1.5mmに薄切りされたラム肉は五香粉とチリパウダーを軽くもみ込んで香りづけをしておき、調理は鉄板で30秒強炒めて仕上げにクミンシードを振りかけるだけ。おいしさとスムーズなオペレーションを両立させています。味に変化をつけているのが、つけ合わせる自家製のヨーグルトソースとサルサソースです。ヨーグルトソースは水切りしたヨーグルトにおろしニンニクとキュウリを合わせて軽くまろやかさを、サルサソースはサルサソースに刻んだパクチー、ライム果汁、ワインビネガーで酸味を利かせてラム肉独特の風味をマスキングさせます。

オススメメニュー2

牛ウニ焼売 2個858円(税込)

焼売の上にたっぷりのウニを天盛りするビジュアルが意表を突く一品。焼売のあんには牛挽肉を採用し、大ブームとなった「うにく(生または低温調理の牛刺しでウニを巻いた一品料理)」にも似た相性の良さを感じさせます。牛挽肉、玉ネギ、椎茸をニンニク、ショウガ、醤油、味噌などで調味して、つけダレなしでも食べられるしっかりした味に仕上げています。1個70gと食べ応えも満点で、牛挽肉は肉肉しい荒挽きで牛脂だけでなく豚脂を少量加えることでしっとりした食感に仕上がっています。

オススメメニュー3

海老の紹興酒漬け 618円(税込)

紹興酒と濃口醤油を合わせた漬けダレに生の海老をひと晩漬け込んだ中華風の一品。中国醤油ではなく日本発祥の濃口醤油を採用したのは「本場の味に寄りすぎない、酒場の気軽さを表現するため」とか。美味しい料理へのリスペクトを忘れずに「あえての手抜き」で注文者を増やしています。使用する海老は時季によって異なりますが、取材時はアルゼンチン産の赤エビを使っています。

お店紹介

「総合居酒屋という軸はブらさず、街に新しい楽しみ方を提案したい」と店長の金子良太さん

昭和レトロの風情を感じさせる「麻雀 登美」の看板をくぐり店の中をのぞくと一転、中央のフルオープンキッチンを囲むようにピカピカのステンレス製のカウンター席が設けられた迫力満点な店づくりに驚かされます。店内はグレーに統一されていますが、ネオンの灯りや花柄の布張りスツール、雀卓を改造したテーブルなどレトロなアイテムを散りばめた時代性のミックス感が、日本を舞台にした外国映画のワンシーンのような非日常感を演出します。

同店を経営する株式会社トーヤーマンは、東京・入谷の居酒屋「暮ラシノ呑処 オオイリヤ」など5店の居酒屋を展開。北千住には和風料理が中心の「酒呑倶楽部アタル」、立ち呑み酒場の「タチアタル」に続く3店目として2022年12月に「ジャンソーアタル」をオープンしました。店長の金子良太さんは10代の頃から外食のキャリアをスタート、居酒屋・バー・カフェなど様々な業態で接客も調理もこなすバイタリティーを発揮。かつてスタッフとして一緒に働いていたオーナーとの再会をきっかけに、同社に入社しました。

フードメニューは40品前後をラインアップ。「レバパテ麩ラウニー」「高菜のアリオリフラポテ」など想像の斜め上をいく食材を組み合わせた料理が目白押し。とはいえ「あくまでもいろいろ食べることができる総合居酒屋」としての軸はブレてはいません。

またドリンクメニューでは、バーテンダー経験を持つ金子店長のスキルを生かし、漬け込みリキュールやブルーキュラソーなどを使ってカクテル風なサワーをオンメニュー。また自然派ワインの品揃えを厚くするなど北千住ではあまりなかった楽しみ方を積極的に提案しています。

基本情報

店名ジャンソーアタル(雀荘當)
所在地東京都足立区千住1-33-11 上野ビル2F
電話番号03-5284-9010
営業時間16:00〜23:30(23:00L.O.)
定休日無休
席数30席
主な客層地元住民、20代〜40代の女性
予算の目安5000円
開業年月日2022年12月
HPhttps://jansoataru-kitasenju.com/

※掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。